補助金は返還しなくていいお金です。
「補助金で資金繰りがうーんと楽になる!」
こんな風に考えて、経営者の関心も高いと思います。
しかし補助金には直ちに資金繰りを改善するような効果はありません。
むしろ短期的には資金繰りを厳しくしてしまう可能性もあるので注意が必要です。
資金繰りを、将来の一定期間の収入と支出を予測して不足が見込まれる場合に資金を調達することとみた場合、その資金調達の時期と金額にある程度の確実性がなくては適切な資金管理はできません。
この点で補助金には次のような難点があります。
1.支給は後払いであること
2.利用できる補助金が常にあるとは限らない
3.審査が厳格で採択されるとは限らない
それぞれ詳しく見ていきます。
1.支給は後払い 自己資金が必要
採択されたとしても支給は後払いが原則です。自社で一時的に全額負担して、事業完了後に精算払いされます。
補助事業規模が大きい場合は一時的に高額な資金を確保しなければならないため、ある程度の資金力を持っていることが事実上の前提条件となります。
例えば、総額2千万円の事業に対して補助率1/2、1千万円の補助金の支給が決まったとしても、まずは事業者が全額2千万円を用意して事業を実施する必要があります。
ただでお金をもらうためには、まずは身銭を切って事業を完了させなくてはならない。
2.利用できる補助金が常にあるとは限らない 募集のタイミング
利用できる補助金が、資金需要に合わせてちょうど良いタイミングで募集されるとは限りません。
それぞれの補助金の募集期間は短く募集頻度も年1回が普通です。また、制度変更も多く、前年募集された補助金と同様な募集が翌年にもあるとは限りません。
ただでお金をもらうためには、資金提供者が動くのをじっと待つしかない。
3.審査が厳格 採択されるのは一部の申請者
補助金の目的は、国や地方自治体が政策目的に合った取り組みをサポートして政策を推進することです。そのため申請者の適性を書類と面接で慎重に見極めます。また好条件の補助金には申請が殺到し、採択されるより落ちる可能性がずっと高いのです。他の申請者との競争を勝ち抜くには、創造性、技術力など自社の優れた点をうまく伝えて、成功可能性がより高かいこと、その結果、国・地域の発展により大きな貢献ができることを審査員に納得してもらわなくてはいけません。
好条件の補助金獲得は、金融機関から融資をうけることよりもずっと難易度が高いといえます。さらに、採択された後も事業完了報告など大量の書類の提出が必要となります。申請準備から事業実施、完了後まで事務負担が相当大きいことも覚悟しておかなければなりません。
補助事業とその事務処理に追われて、従来の主力事業がおろそかになり売上が大幅ダウンしたという例もあるようです。
ただでお金をもらうためには、借りる場合と比べてより一層のハードワークが必要。
補助金は資金繰りには使えない
上述した支給時期など補助金の特徴を考慮すると、補助金収入をあてにして資金繰りを考えるのは現実的ではありません。
通常の資金繰りには結局銀行等からの借入が適しています。金融機関からの融資を念頭において、財務健全化、収益性向上に努めること、今後成長が見込めることを事業計画で説明できるようにすることが資金繰りで失敗しないための基本になります。
もちろん自社がうまく利用できそうな補助金があればチャレンジする価値はあります。日頃から補助金情報のアンテナを張り、自社とマッチしそうなものを見逃さないという姿勢も大切です。
参考:補助金の情報サイト
①「ミララボ」 https://www.mirasapo.jp/subsidy/index.html
中小企業庁委託事業による中小企業のサポートサイト。
各都道府県別の補助金等を検索できます。
②「中小企業庁HP」 http://www.chusho.meti.go.jp/koukai/koubo
補助金等の公募案内です。
③「会計事務所のHP」
会計事務所HPには補助金等の情報をのせているところもあります。
情報の出所は、ほとんどが上記①か②なのですが、税理士さんによっては補助金等の情報をかみ砕いて丁寧に解説されている方もいらっしゃいますので、一応チェックしてみてください。
まとめ
資金調達手段としての補助金獲得は資金繰りにはなじみにくいといえます。資金不足の解決策には金融機関からの借入れがファースト・チョイスとなります。