値決めはどうすればいいのか?販売価格決定4つの方法

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販売価格をどのように決定すればいいのか悩む経営者も多いでしょう。

「値決めは経営」と言われるように価格決定は経営上重要であり、難しいものです。

 

価格決定については、経済学やマーケティングなど様々な考え方があります。

また、価格決定に影響を及ぼす要因も多岐にわたります。

 

当記事では、価格をどのように決定すればいいか会計面から解説します。

当記事を読むことで、価格決定のための一つの確固たる基準を持つことができるようになるでしょう。

 

当記事では、価格決定の方法として、

  1. 総原価に目標利益を付加して算定する方法
  2. 目標マークアップ率により価格を決定する方法
  3. 損益分岐点分析により価格を決定する方法
  4. 直接原価計算により価格を決定する方法

の4つの方法について解説します。

1.価格決定の様々な要因

価格は会計面のみから決まるわけではありません。

景気の動向、製品の機能やデザイン、代替製品の有無、業種の特殊性や競争の状態、製品需要の価格弾力性なども価格の決定に影響を与えます。

その他、製品のライフサイクルも価格政策に関連性があります。

 

たとえば、新製品の導入時において、新しいモノ好きなどを狙って意識的に高価格で売り出す場合があります(スキミング戦略)。

反対に、マーケットシェアを確保することを目的として、比較的低価格で販売することもあります(浸透価格戦略)。

 

様々な要素が価格決定に影響を与えるなかで、会計は価格決定するための一つの要素にすぎませんが、考えるべき重要なものです。

では、会計面から考えた場合、価格はどのように決定されるのでしょうか?

2.全部原価における価格決定方法

2-1.総原価に所要利益を付加して算定する方法

会計における価格決定方法の一つは、製品の総原価に所要利益を加算することにより算定します。

 

 

 

なお、総原価とは、製造原価と販売費および一般管理費の合計をいいます。

 

たとえば、製品の1個当たりの総原価が次のとおりであったとします。

  • 材料費          40円
  • 労務費          80円
  • 製造経費         60円
  • 販売費および一般管理費  70円
  • 総原価(合計)     250円

 

そして、所要利益を1個当たり20円とすると、目標販売価格は、

                  250円(総原価)+ 20円(所要利益) = 270円(目標販売価格)

となります。

 

ちなみに、この製品を年間10万個製造し、製造販売に必要な投下資本が1000万円とし、また、目標投下資本利益率は税引前で20%であるとすると、所要利益は次のように計算します。

 

 

 

2-2.目標マークアップ率による価格決定方法

実務的には、上記2-1の総原価ではなく、製造原価を基準に価格を決定していることが多いでしょう。

具体的には、目標マークアップ率を「売上総利益÷売上原価」により算定することで、目標販売価格を次のように決定します。

 

 

 

2-3.全部原価方式による価格決定のメリット・デメリット

これらの方法による価格は固定費を含む全部原価で計算するため、その価格で予定した販売数以上売れると、全部原価と所要利益を回収することができます。

 

また、製造販売に掛かった原価と適正な利益の回収は、営利企業なら当然の行為であり、社会的にもその価格は認められやすいというメリットがあります。

 

一方、この方法で決定された販売価格は全部原価を上回らなければ利益が出ないことを意味するため、不況で不動能力をかかえた企業の場合、販売価格が低いことを理由に受注を断ってしまうこともあり得ます。

 

また、全部原価を上回る価格での販売は、すべての原価が回収され、損失が回避されるという誤解があるため、競争上、価格を引き下げる必要があっても頑なにその価格を維持してしまう傾向があります。

 

このようなことが起こるのは、固定費をある意味強引に製品に割り振っているためだからです(製品への配賦)。

3.損益分岐点分析による価格決定

全部原価による価格決定には上述したような欠点があります。

そのような欠点を防止するために、原価を変動費と固定費に分け(変動費と固定費の分け方はこちらで解説)、損益分岐点により(損益分岐点分析はこちらで解説)、価格を決定する方法があります。

 

たとえば、ある製品1個あたりの変動費が250円で、固定費は1500千円とします。

また、販売価格と予想販売量の関係は次のようであるとします。

 

 

 

 

 

 

このような予測のもと、利益が最大になるのは、販売価格450円です。

これを損益分岐点図表で見てみましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

利益は売上高線と総原価線の差となりますので、予想販売量1万個販売すれば、利益は500千円となります。

そして、この損益分析点図表のもとでは、販売量が増加すると利益はより大きくなることがわかります。

 

しかし、前述したように販売量を増やすためには販売価格を低くする必要があり、その結果、利益は減少します(たとえば、予想販売量12千個の場合、販売単価は400円、営業利益は300千円)。

なぜなら、下図からわかるように、売上高線が変化してしまうからです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ですので、損益分岐点分析による価格決定は、最も利益が出る価格を選択するというより、420円から465円の幅で決定することになります。

 

実は損益分岐点分析により決定された価格は、全部の原価を直接回収しようという発想はありません。

販売価格から変動費を控除した「貢献利益」により、固定費総額を回収していくという考え方です。

貢献利益がプラスである限り、固定費総額の一部は回収可能であるため、その製品の生産販売から即撤退しません。

この点が、全部原価を販売価格が上回らなければ、撤退の判断に傾きやすい全部原価方式による価格決定と大きく違います。

 

損益分岐点分析による価格決定は 原価計算していなくとも価格を決定することができるため、簡便です。

また、無理に固定費を製品に結び付けて計算しないため、操業度により製品単位原価が歪められることがありません。

 

一方、需要予測を行わなければならないため、この方法で価格を決定することが難しいと感じる方も多いでしょう。

さらに、仮に需要予測できたとしても、その精度が問題になることも多いでしょう。

4.直接原価計算による価格決定

直接原価計算による価格決定は損益分岐点分析による価格決定の貢献利益で固定費総額を回収するという考え方を踏まえつつ、各製品の収益力に応じて弾力的な価格決定が可能となります。

 

この方法による価格は次のように決定します。

 

 

 

 

 

 

なお、個別受注品の場合、この方法による価格決定は次のように計算します。

 

 

 

直接原価計算による価格決定で注意すべきは、変動費だけ回収できるような低価格(製品の価格競争力は強くなります)にしないことです。

このような価格決定をすべての製品に適用すると、全部原価を回収できないということになってしまいます。

直接原価計算による価格決定でも全部原価を回収していく点は同じです。

ただ、製品の特性や経済状況に応じて、収益力のない製品は低価格(わずかに固定費を回収できるような価格)にし、収益力のある製品は高い価格を付けるといった弾力的な価格設定が可能である点に違いがあります。

まとめ

経営は値決めであるという経営者がいますが、価格決定は非常に難しいものです。

価格決定に影響を及ぼす要因が多岐にわたるためです。

 

しかしながら、競争相手との関係のみで価格を決定していれば安心というわけではありません。

なぜなら、会社の状況により、競争相手が設定できる販売価格を常にあなたの製品が実現できるわけではないからです。

 

様々な要因で価格が決定されるとはいえ、会計面でどのように価格が決定されるか知ることは中小企業経営上重要でしょう。

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