中小企業の実地棚卸のやり方!経営実務の基本

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マンパワーの点から精度の高い実地棚卸を実施するのは難しいと考える経営者もいるでしょう。

確かに、大企業のように精度の高い実地棚卸をすぐに実行するのは、中小企業にとって難しいことかもしれません。

 

だからと言って、いい加減な実地棚卸を続けていては、実地棚卸があなたの会社にもたらすメリットを得ることができません。

 

最初から完璧な実地棚卸をしようとは考えずに、徐々に精度を高めていくといいでしょう。

それにより、在庫がないのに受注してしまうようなミスがなくなったり、過剰在庫を持たなくなるでしょう。

1.実地棚卸の効果を最大限にするためには?

棚卸には帳簿棚卸と実地棚卸の2種類ありますが、この2つの棚卸によって正確な利益額を算出することができます。

 

特に実地棚卸は、デットストックや劣化品や在庫管理状況といった経営管理に役立つ情報を目で見て確認することができます。

 

得るものが多い実地棚卸ですが、適当に行うと利益を正確に算定できないばかりか、経営に必要な重要な情報を得ることもできなくなります。

 

ですから、実地棚卸を単なる在庫のカウント作業と考えずに、精度の高い棚卸を実施することを目指しましょう。

 

在庫が多いと、マンパワーの点から精度の高い実地棚卸を実施することは難しいと思うかもしれません。

しかし、「実地棚卸」という経営実務をしっかり理解し、そのうえで綿密な事前準備をすれば、中小企業であっても精度の高い実地棚卸は十分可能です。

2.実地棚卸の記録方法

実地棚卸は在庫をカウントし、その数量を記録していきます。

その記録方法として、棚卸原票(タグ)と棚卸表があります。

棚卸原票と棚卸表は次のようなものです。

これらはシンプルな形式ですので、品目コードなど自社で必要な項目があれば適宜追加するといいでしょう。

上の図からわかるとおり、棚卸原票は在庫1品ごとに記録するのに対して、棚卸表は複数の在庫品を記録します。

 

棚卸原票、棚卸表もその項目に、大きな違いはありません。

 

それでは基本的な項目について解説します。

上の図「① No」は配布するすべてに連番でナンバリングします。

こうすることで、在庫のカウント漏れなどを防ぐことができます。

 

「② 実施日」は棚卸実施日を記入します。

 

「③ 担当者」には、棚卸作業担当者名を記載(あるいは押印)します。

 

「④保管場所」はカウントする在庫の作業を行った実施場所を記載します。

事前準備で在庫の保管場所を詳しく決定している場合は、ラックヤードの棚番などを記載します(在庫の事前準備についてはこちらの記事で解説しています)。

 

「⑤品目」については、品目名称、あるいは型番を記載します。

品目コードをつけて詳細に在庫管理している場合はそのコードを記載してもいいでしょう。

 

「⑥数量」は実際にカウントした実地棚卸数量を記載します。

なお、小さなボルトやネジなどの在庫は、総重量をロット単位当たりの重さで割るなどして数量を計算します。

 

「⑦備考」は、キズなどの在庫状況、長期滞留品についての情報(入庫年月日や在庫状況)など実地棚卸で気付いた点を記載するといいでしょう。

この備考に記載された情報は、利益の正確な算定のためだけでなく、経営管理に重要な情報でもありますので、気付いたことはなるべく記載するようにします。

3.棚卸作業の実際

3-1.カウント作業の実際

基本的に棚卸作業は二人一組で行います。

一人が数量をカウントし、もう一人は作業の確認と記録を行います。

なお、数えるときはなるべく声を出して数えると、記録係もカウント担当者がミスをしていないかどうか確認できます。

 

また、実地棚卸作業はあっちこっち行ったり来たりしないようにしましょう。

そのために、順序よく在庫保管場所(ロケーション)を回れるように、事前準備の段階で動線を決定しておくと実際の作業がスムーズに進みます。

 

棚卸原票、棚卸表は複写式にすると便利です。

なぜなら、在庫を数え終わったら、棚卸原票はその在庫に貼付するからです。

棚卸表の場合は、所定の種類の在庫(たとえば、ラックの列など)のカウントが終了したら、特定の箇所に貼付します。

 

棚卸表は在庫を複数記録していくため、通常在庫品1品ごとには貼付しません。

ですので、カウント作業終了を示すために、棚卸表の複写部分を在庫保管場所の分かりやすいところに貼付します。

 

棚卸原票は在庫1品ごとに貼付するため、その在庫品のカウント作業終了が一目瞭然にわかり、カウント漏れなど発見しやすくなります。

棚卸表の場合でも、たとえば目印として大き目の付箋を在庫品ごとに貼付すると、棚卸原票のようにカウント作業の終了が明確にわかります。

3-2.実地棚卸作業管理の実際

担当箇所のカウント作業終了後、棚卸原票が担当エリアの在庫にすべて貼付されていることを確認します。

そして、複写のもう一方の棚卸原票(あるいは棚卸表)は棚卸原票(あるいは棚卸表)を管理担当者のところへ持ち帰り、回収チックを行います。

 

管理担当者は棚卸原票管理表(コントロールシート)を使用して、実地棚卸作業が終了したことを確認します。

棚卸表も同じようにコントロールシートで回収管理します。

 

なお、棚卸原票管理表(コントロールシート)のフォームは次のようなものです。

 

3-3.棚卸差異明細表の作成と原因究明

回収した棚卸原票(あるいは棚卸表)と帳簿棚卸残高の差異を把握するために、実地棚卸当日中に差異明細表を作成します。

差異明細表で差異が生じている在庫は再カウントを実施します。

再カウント実施後、棚卸の確定数量を記入します。

棚卸数量確定後、差異明細表は締め切り、数量の変更は行いません。

 

最終的に差異のある在庫は、原因究明を遅くとも1週間以内に行うといいでしょう。

 

実地棚卸は在庫数量を確定して終了というわけではありません。

差異の把握とその原因究明までしっかり行う必要があります。

 

差異が出ているのは、在庫管理のやり方がまずいことを意味します。

このような状態を放置すると、たとえば、在庫の実数がゼロ、帳簿数量がある場合、帳簿数量を見て、受注してしまうかもしれません。

結果的に、納期が遅れたり、出荷できなくなるかもしれません。

 

したがって、差異を放置せず、どこに問題があったのか原因を究明し、適切な改善をしなければなりません。

 

棚卸差異は、必ずしも、ランダムに発生するわけではありません。

発生場所や商品によって偏りがあることも多いでしょう。

 

また、入出庫の頻度により、発生率に違いがあるかもしれません。

 

やみくもに、原因を調べるのではなく、見当をつけるための情報を得てから差異分析を行うといいでしょう。

まとめ

精度の高い実地棚卸は準備を含めて大変な作業量になります。

初めから精度の高い実地棚卸を完全実施することは難しいでしょう。

 

棚卸数量を確定して終わるような実地棚卸から徐々に精度の高い棚卸に改善していけばいいのです。

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