成長性を見る経営指標として、この記事では「売上高成長率」、「経常利益成長率」の2つを紹介します。
この記事を読むと中小企業経営者が抑えておくべき成長性の経営指標について、次のことがわかります。
- 中小企業が成長しなければならない理由
- 計算方法と意味
- 目安
- 成長性の経営指標を改善するときに考えるべきこと
成長性の経営指標を理解することで、不安定で危険な成長を避けることができるでしょう。
1.中小企業が成長しなければならない理由
中小企業で最も大きなコストは「人件費」です。
売上規模が小さければ当然、人件費の負担は大きくなります(売上に対する人件費負担についてはこちらの記事で詳しく解説しています)。
業種で違いはあるものの、経営するためには最低限の人材が必要です。
人件費の負担が重いと感じている経営者は、なんとか人件費を削減できないかと考えるかもしれません。
しかし、経営を上手く続けていくためには、ある程度の人件費はかかるものです。
過度にコストを減らそうとすると、従業員のモチベーションが下がり、あなたのビジネスの力を弱めてしまうかもしれません。
あなたの経営が苦しい原因は、人的規模に売上が見合っていないことであるかもしれないのです。
このような場合は、人件費の削減を考えるより、人件費に見合った売上の増加を図る必要があります。
成長の度合いは、従業員が増加したといった人的な企業規模の増大などありますが、中小企業は売上高や利益の成長を考えるといいでしょう。
2.成長性の指標2選
この記事では、成長性をみる簡単な経営指標として、次の2つを紹介します。
- 売上高成長率
- 経常利益成長率
3.各経営指標の計算方法
3-1.売上高成長率の計算方法と意味
売上高成長率の計算は次のとおりです。
売上高が前期からどのくらい伸びたのかを示す指標です。
この比率がプラスなら良いと判断します。
さらに、毎年売上高成長率が増加していればなお良いでしょう。
しかし、売上高成長率の値が毎年増加するのは、それほど簡単なことではありません(どんなビジネスでもいずれ成長は鈍化する)。
ですから、売上高成長率がプラスになることをまず目指しましょう。
自分のビジネスは成熟産業なので、売上はもう伸びないと思い込んでいる中小企業経営者もいるでしょう。
確かに、大企業のように大きな市場(市場全体といってもいい)を相手にしているような企業には当てはまることが多いと思います。
しかし、小さな市場を相手にしている私たち中小企業はまだ売上成長の余地があります。
たとえば、都市部ではどこの町でも、歯科医院を多く見つけることができます。
歯医者さんは飽和状態でどこも売上が減少しているように思えるでしょう。
しかし、歯医者さんのなかには分院を多く持つ方もいます。
これは、美容院、治療院(マッサージや整骨院)、不動産業など競争の激しい他業種でも当てはまります。
つまり、売上を増やしているビジネスと減らしているビジネスがあるということです。
売上を増やしている経営者は「運が良かった」と言いますが、単に運が良いという理由でビジネスが好調なわけではないことを考える必要がありそうです。
3-2.経常利益成長率の計算方法と意味
経常利益成長率の計算は次のとおりです。
経常利益成長率は経常利益が前期からどのくらい伸びたかを示す指標です。
この比率がプラスなら良いと判断します。
経常利益は会社の実力(会社の稼ぐ力)を表しますから、この比率が伸びているということは会社の実力が向上しているということです。
通常、売上が成長していれば、経常利益も伸びます(増収増益)。
売上が落ちて利益が伸びている場合(減収増益)、落ちた売上に見合うようにリストラなどを行ったことが原因かもしれません。
また、売上が増加しているにもかかわらず、経常利益が落ちている場合(増収減益)、将来の成長のために設備投資をしたのが原因かもしれません。
いずれにしろ、外部環境の変化(たとえば為替レートの変動など)でなく、自社の施策によって減収増益、増収減益になったとしても、近い将来に増収増益になるなら成功と言えるでしょう。
4.成長性の目安
売上高成長率、経常利益成長率のいずれも目安としての業界平均を示しても意味はないでしょう。
ですので、基本的に自社の過去実績と比較することが有効です。
また、ライバル企業(あるいは目標とする同業他社)の財務数値を入手できるなら、それと比較すると良いでしょう。
5.成長性の経営指標を改善するために考えるべきこと!
中小企業は売上規模の拡大についても考えるべきです。
しかし、高度経済成長の時と違い、現在は売上を増やすことはできないと諦めてしまっている中小企業経営者も多いでしょう。
このような経営者は利益を基準に会社が発展しているかどうか判断しているのではないでしょうか?
利益は「売上-費用」で計算しますが、売上はコントロールできないと考えているため利益増加の手段は費用削減が中心になります(費用削減至上主義の危険性はこちらの記事で解説しています)。
この費用削減策が将来の「増収増益」のためであるならまだいいですが、単に利益が欲しいという後ろ向きの理由であるなら注意が必要でしょう。
もちろん、無駄な出費をしないというのは経営者の努めです。
しかし、利益を出すためだけに、費用削減至上主義になってはいけません。
ですから、成長性の経営指標は経常利益成長率だけを見るのではなく、売上高成長率とセットで見なければいけません。
そうでないと、後ろ向きの費用削減策によって経常利益成長率がプラスになっている可能性があるからです。
このような経常利益の成長は、かえってあなたの会社の力を弱めてしまっているかもしれません。
まとめ
企業、特に中小企業は成長することを考えなければなりません。
なぜなら、今ある「人・組織」に見合うだけの売上規模がない可能性があるからです。
会社が成長しているかどうかを見る経営指標に売上高成長率と経常利益成長率があります。
この2つの簡単な経営指標はセットで考える必要があります。