あなたの望むビジネスであってもリソース(経営資源)が不十分であれば、あきらめざるを得ません。
今足りないリソースの確保だけでなく、将来の安定的な成長に向けてのリソースの蓄積を考えないと、いずれ失速するでしょう。
もちろん、リソースの一つである「お金」については十分考え、準備したことだと思います。
しかし、お金があればどんなリソースでも調達可能であると思うのは、良い考えではありません。
1.経営資源(リソース)とは?
リソースは経営資源のことです。
一般にリソースは「ヒト、モノ、カネ、情報」を指します。
「ヒト」は人的リソースのことです。
たとえ一人で起業するとしても、あなたという人的リソースは必要となります。
「ヒト」はただ集めさえすればそれで良いというビジネスは少ないはずです。
あなたのビジネスもそれなりの経験と知識を持つ人が必要でしょう。
「モノ」は物理的リソースです。
具体的には、店舗、機械設備、販売システムなどのITシステム、流通ネットワークなどです。
たとえば、Amazonは、高度なITシステムや巨大倉庫、流通インフラといった物理的リソースに強く依存するビジネスです。
「カネ」は事業資金です。
ビジネスにより、お金を多く集めなければならないか、少なくとも大丈夫かという違いはありますが、いずれにしてもビジネスにはお金は必要です。
ゼロ円起業といったビジネスは現実的には少ないですし、見つけたとしてもスピーディーにビジネスを展開していくことは難しいでしょう。
「情報」は、特許、著作権、パートナーシップ、顧客データベースといった知的財産やブランドなどです。
「情報」リソースは作り上げることが難しい反面、競合がなかなかマネできないので競争上有利に働きます。
2.「カネ」というリソースの危険性
なんでもかんでも自分一人でやろうとする経営者がいます。
そうさせる原因の一つに、「カネ」というリソースの問題があります。
お金が減っていくことは経営者にとって恐怖を感じるものなので、できれば減らしたくないと思うのは当然です。
しかし、一人でなんでもやるとしても経営の仕事は多岐にわたります。
経営者として集中すべき仕事を戦略的に考えないと、結局どれも中途半端になり、本業とかかわりのない仕事に多くの時間をとられることになります。
反対に、潤沢な資金があったとしても「カネ」ですべて解決できるというわけではありません。
何も考えずにお金を使うと、その潤沢な資金も案外早くなくなっていくものです。
3.リソースを使い、どんな活動をするのか?
ビジネスを成功に導くために必要なリソースを明らかにすることは重要です。
そして、メインとなる活動で、どのようにリソースを使うかについて、明らかにする必要があるでしょう。
その重要な活動を明確にし、起業初期の限りある資源を集中投下することが必要です。
ビジネスを始めるにあたり、リソースをどのように企業活動に配分していくかを考えることはとても重要な問題です。
あなたのビジネスが成功するためには、どのような活動をしなければならないでしょうか?
それは顧客の獲得や商品やサービスメニューを開発することであるかもしれません。
あるいは製造機械への投資であるかもしれません。
また、ブランドや知的財産を創造することが重要であるかもしれません。
いずれにしろ、企業経営を成功させるために必ず実行しなければならない重要な活動を早い段階でしっかり考えておく必要があります。
そのうえで、限りある経営資源をその活動に集中して投入していくのです。
もちろん、あなたの今ある経営資源だけでは十分でないことが多いでしょう。
しかしながら、ビジネスを成功させるための主な活動とそのために必要なリソースを明らかにし、その獲得に向けて行動しないと、効率的かつ安定的な経営はできないでしょう。
あなたがフォーカスすべき重要な活動は業種によっても違います。
また、たとえ同じ商売をしていたとしても違うはずです。
なぜなら、そのフォーカスすべき重要な活動が、差別化の大きな要因になるからです。
たとえば、あなたが美容院の経営を考えているとしましょう。
あなたの街にも多くの美容院があると思いますが、成功するためには他と同じようなことを考えても難しいわけです。
あるお店は、美容院へ行く時間がとれない忙しい人向けに短時間でカットを終えるために、素早く正確なカットを行う人が必要となります。
この場合は、店舗の装飾等にはあまりこだわらなくて良いのかもしれません。
4.リソースの重要性を無視する経営者
最近、飲食業の業績低迷をメディアで聞くことが多くなりました。
業績の良い時に拡大した店舗が足かせになっているところが多いようです。
お客さんが多く訪れ、売上が急激に上がっていくと、新規出店しないとチャンスを逃すように感じるのでしょう。
こういった経営者は人材をすぐに確保できると考えているのかもしれませんが、その人が必要な人材であるか(または、そうなるか)という話とは別です。
スケールが小さい時は、人材の教育に十分な時間をかけて店舗に投入できたでしょう。
しかし、急拡大すると、教育が追い付かなくなり、その人材の以前のキャリアに頼ることが多くなります。
このキャリアは以前のお店の経験値であって、あなたのお店に必要な文化とは無関係です。
こうして、お店のサービスはちぐはぐになり、顧客満足度は下がっていきます。
同一地域でのお店が飽和状態で、飽きられることによる売上が減少したということも確かにありますが、お店のオペレーションの乱れによるサービスの低下も無視できません。
リソースは足りないときにすぐ調達できると思わずに戦略的に考えることが必要なのです。
まとめ
ビジネスがスケールアップしていけば、必要な経営資源はすぐにでも調達可能であると考える経営者もいるでしょう。
しかし、あなたの会社を差別化し強くするためのリソースは簡単に確保できないと考えるべきです。
ですので、スケールの小さいうちから、将来のリソース確保に向けて戦略的に行動することが必要です。