中小企業は、売上志向の経営をすべきか、あるいは利益志向の経営をすべきなのでしょうか?
モノが売れない時代になっているので、利益志向の経営の方が良いように感じます。
しかし、本当にそうでしょうか?
利益志向という名の下で、費用削減“至上主義”になっていないでしょうか?
売上志向と利益志向
売上志向の経営は最近では旗色が悪いようです。
売上志向の経営をすると、どうしても薄利多売を目指してしまい、儲からないといった理由です。
また、他人を押しのけてでもお客様をとってくるような、どこか冷たくガツガツしたイメージが「売上至上主義的」な考え方にはありますので、これも避けられる理由かもしれません。
一方、利益志向は、売上を拡大することが目的ではないのでより大きな利益が出るように売ります。
また、経営を売上だけでなく、費用も含めて総合的に考えているので、知的で冷静なイメージがあります。
会社を強くする「利益志向」になっているか?
こうやって並べてみると、確かに利益志向が良いように思えます。
ですが、ここはじっくり考えて見ましょう。
そもそも、利益はどこからやってくるのでしょうか?
利益はポンとあなたのところに突然姿を現すわけではないのです。
利益は売上から費用を引いた残りだからです。
販売活動という努力によって売上をあげ、そしてなるべく安く仕入れたりするなどの費用削減努力により利益は生まれます。
つまり、売上や費用などのようにあなたが直接働きかけて生み出すことはができません。
中小企業の場合、問題なのは利益志向の経営が「費用削減“至上主義”」になっていないかということです。
本来は売上と費用を総合的に考えて努力していかなければならないはずが、手を付けやすい「費用削減」に目がいってしまうのです。
売上は、コントロール不能と考えている経営者も多いのではないかと思います。
実際、中小企業白書によると、中小企業経営者のおよそ74%が「営業力・販売力」の強化を課題として取り上げいます。
こういったことを考えると、私たち中小企業経営者は「利益志向」をベースとしながらも、その利益を生み出す本源的な要素である「売上」にもっと軸足を移すべきでしょう。
今までの中小企業の利益志向の考え方が次のようなイメージだとすると、
売上に軸足を置いた利益志向は次のようなイメージになります。
そもそも、利益を生み出す元となるのは売上ですし、売上がなければ費用を負担することもできなくなります。
私たちは、売上を生み出す力を“本源的な稼ぐ力”、そして利益を生み出す力を“総合的な稼ぐ力”と呼んでいます。
つまり、利益志向の経営は“総合的な稼ぐ力”を得るための経営であり、そのためには“本源的な稼ぐ力”がなければならないということです。
それは結局、売上志向と同じで薄利多売になり儲からないのではないかと思う人もいるかもしれません。
しかし、利益志向の大枠のなかで売上に軸足を置いているのでそういったことはないでしょう。
また、売上志向が薄利多売になり儲からないという理屈も素直にうなずけません(傾向はあるとしても)。
なぜなら、そもそも売るのが難しい状況であるなら、利益志向だろうが、売上志向だろうが、値下げして売るからです。
これに対して、利益志向の場合はそのような商品は仕入れないし、作らないという方もいるかもしれませんが、それは“マーケティング思考”を持っているかといった話になり、会計ベースの考え方とは別でしょう。
まとめ
中小企業経営者は利益志向のなかで、なおざりにしてきた売上について考えていくことが解であると思います。
要は“至上主義”に陥らないことが重要なわけです。
この“至上主義”は売上志向だろうが、利益志向だろうが起こります。
極端に言うと、売上志向は利益を度外した販売をするかもしれないという点で危険ですが、利益志向であっても「費用削減“至上主義”」はいずれ削減する余裕がなくなり赤字になります。
ですから、利益志向をベースとし、売上についてもしっかり考えていかなければならないのです。