「失敗は成功のもと」
この考え方はビジネスにも当てはまる、というのが経営に携わる人の直観的な意見だと思います。実際に、企業が失敗を体験することでその後の成功確率が上がるという経営学の研究結果があるそうです。
そうはいっても、手当たりしだいに当たって砕けるだけでは成功できないばかりか事業の継続に支障がでてしまいます。
成功を確かなものにするためには、「よい失敗」と「わるい失敗」の違いを理解することが大切です。その上で、「よい失敗」だけを重ねられるよう、少し工夫が必要です。
失敗しても、成功するまで続けられますか?
経営者は不確実性の高い環境下で判断しなくてはいけません。どのような製品・サービスが当たるか、どんなマーケティング施策が効果を上げるかを事前に見極めることは簡単ではないため、多くの行動はそれほどうまくいきません。その反面、一度うまくいくと大きなリターンが期待できます。
環境変化が激しいIT業界では「結果はわからないが何でもやってみよう」という考えの企業が成功しやすいといわれます。業種等による程度の違いはありますが、うまくいかないことも覚悟して様々な試みを実行してみることが、今の経営者に必要な姿勢といえます。
「失敗なんて無理!うちみたいな小さな会社じゃ潰れちゃうよ」と考える経営者もいるかもしれません。
確かに失敗で大きな損害をうけると、成功に届く前に事業からの撤退を余儀なくされるかもしれません。しかし、少額、小ロット、短期的な施策であれば、失敗を繰り返しても、それぞれのダメージは限定されているため次の手を仕掛ける余力が残るはずです。
このような小さな単位でテスト的に実施する施策は、「よい失敗」になります。
「よい失敗」を経ることで学習効果の積上げも期待できます。実践を通じて新しい情報を取り込むことができ、発想の幅も広がります。行動の修正を繰り返すことで着実に成功に近づくことができるのです。
他方、「わるい失敗」とは大きなダメージが残る手痛い失敗です。例えば、いきなり予算の大半を費やして新商品を大々的に売り出したものの期待した結果が全くでなかった場合です。学習効果は同様にあるはずですが、問題はその教訓を活かして再チャレンジしようとしても組織にその体力が残らないことです。
二段階に分けて実行する
よほど安定的な環境でない限り、先ずはいろいろな施策を小さく実行して反応を確かめるアプローチが有効です。
ステップ1: どんどん小さく試してみる
本命的な施策にこだわらず、それまでターゲットとしてあまり意識していなかった領域、従来のやり方とは違う方法も試してみる価値があります。
ステップ2: テストの反応を確認して判断する
成功を確信 ⇒ 経営資源を追加投入し本格展開に移行
まずまずの反応 ⇒ 修正してテストを継続
よい反応なし ⇒ 深入りせず見切り
創業期こそ焦らずテスト
「創業計画を練り上げて、寝る間も惜しんで、一気に勝負を賭ける」
この様に考えている起業予定者は注意が必要です。起業への情熱が溢れるよい心構えにもみえますが、起業初期の躓きパターンに陥る危険があります。
会社をおこす人は、業界での豊富な経験や革新的なビジネス手法など強力な武器を携えて自分なりの勝ちパターンをイメージして事業に乗り出します。それにもかかわらず、事業を成長軌道に乗せることができる起業家は多くありません。
事業には、「実際にやってみないとわからない部分」があり、経験的・直観的に「いける!間違いない」と思っても、実際にやってみると見込み違いだったというケースは少なくありません。創業計画は起業に不可欠なツールですが、机上の計画であり未完成のシナリオである点を忘れてはいけません。
創業期の会社は一般的に財務基盤がぜい弱なため、たった一度の「わるい失敗」で危機的状況に追い込まれることがあります。
本格的な行動に先立ち必ずテストを行うことが肝心です。起業のために温めたスペシャル・ワンと思える施策であっても、二段階で実行して「よい失敗」をする余裕を持つことが大切だと私は考えています。
最初に小さく試してみることの3つの効果
1.「わるい失敗」の回避
計画していた方法では通用しないことが早期に明らかになり、損失は小さく済みます。
2.「よい失敗」の積み上げ
例えば、事前に知り得なかった情報の入手によって、実際の事業環境に一段と適合した精度の高い判断・行動が可能となります。
3.成功のタネを蒔く
多くのアイディアを小さく実行することで、成功につながる機会をみすみす逃してしまうことを予防します。テストの結果、高い確率で花が咲き豊かな果実が実るとわかれば、すばやく本格展開に移行します。
まとめ
いろいろなアイディアを小さく試して行動に柔軟性を持たせることが、成功できるまで、倒産リスクを抑えてポジティブに挑戦を続けることを可能にします。