以前、起業の動機について記事を書きました。
その記事の中で、社会貢献といった「他人のため」に起業するより、より多くのお金を得たいとか、自分の裁量で働きたいとかといった「自分のため」の起業の方が欲望のパワーを利用できるというお話ししました。
参考 ➡ 起業の動機は気高くなければならない!?
今回は、「自分のため」という起業動機の中で、起業志望の人が表立って語らない「より多くのお金を得るため」という動機についてお話しします。
金儲けは悪なのか?
「金儲け」という言葉はネガティブなイメージの方が強い気がします。
つまり、「金儲け=人を騙してお金を取る」といったようなイメージです。
逆を言えば、お金を儲けないことは私利私欲がない清廉なイメージです。
こういったイメージを持っていると、何かお金を儲けることに罪悪感を感じます。
しかし、そもそも営利を目的として起業する以上、お金儲けを切り離していいわけがありません。
儲けないと、あなたや従業員の給料が出ないし、経営に必要な様々な経費を賄うことができなくなり経営が維持できません。
もちろん、あなたの悩みはこのような分かり切ったことではなく、端的に言えば、お客様から頂いたお金で贅沢をしていいのか(給料を多くとっていいのか)ということだと思います。
給料を多くもらうのは悪い起業家か!?
お客様が喜んでお金を出してくれたいということは、あなたの商品・サービスに満足してくれたということです(とりあえず、最初は・・・)。
その結果、儲けが出てあなたの懐具合がよくなることについてお客様を気にする必要はありません。
確かに、お客様中には「そんな贅沢してるなら客に還元しろ」という人もいるかもしれません。
しかし、こういった場合は価格が下げることより、あなたが当初お客様に約束した価値を提供できていないと考えたほうがいいでしょう。
そして、約束した価値を提供できるように、しっかりフォローしましょう。
得てして、悪い業者ほど売ったきりで、お客様とコミュニケーションを取りたがらないものです。
吹聴して回らない限り(儲かっていないのに儲かっているように吹聴する人もいますが・・・)、あなたにとってのいいお客様は、あなたが思うほど他人の生活水準を気にしません。
ですから、お客様が「十分に満足する価値」を提供し、堂々と「十分に満足する水準の給料」をもらいましょう。
正しい起業動機とは?
「十分満足する水準の給料」を目指した起業を勧めるのは、次の2つの理由からです。
一つは、このようなことを心配する起業家は悪い起業家にならないからです。
むしろ、こういった人は「儲け“ない”」ため苦労することの方が多い気がします。
そして、もう一つは、起業の動機として「お金を儲ける」としたほうがいいのです。
「自由を求める」といった動機は分が悪く、長期的にはうまくいかないほうが多いのです。
アメリカの起業家の実態について書かれた「<起業>という幻想」(スコット・A・シェーン 白水社)という本の中に次のような記述があります。
『誰かの下で働きたくないのでビジネスを始めたという人は多い。残念ながら、そういう理由でビジネスを始めた人は、起業家としてあまりうまくいっていない。彼らのビジネスは、利益目的でビジネスを始めた人に比べて、それほど儲からず、成長も遅く、失敗する確率も高い』(P168)
それは、なぜなのかということですが同著から引用(P168)します。
『新たなビジネスというものは、しばしばその創業者の望みを反映するものである。誰かの下で働きたくないので創業した人たちは、お金より自律性を求めがちなので、結果として、資金面でのサポートもあまり受けようとしない傾向にある。対照的に、儲けを求めてビジネスを始めた創業者は、その目標に合わせるために、経済的に成功するビジネスを作ろうとするので、それが投資家、従業員、顧客からの前向きな反応を呼び込むのである』
これはアメリカの話ですが、起業に関する統計(例えば開業率など)は、先進国では同じような傾向を示します。
日本では、起業動機とビジネスの成否についての統計資料は、私の知る限りありませんが、日本の起業についても当てはまるのではないでしょうか?
要するに「お金を儲ける」ことを目的とした起業を、後ろめたいと思う必要はまったくないということです。
まとめ
「お金を儲ける」という起業動機を悪い理由ではありません。
むしろ、企業として存続し、成長し、高収入を生み出すビジネスを望むなら、こういった目標を掲げて起業すべきです。