儲かる社長の戦い方!?

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ターゲットを絞る、お客様のベネフィットを考えると言っても、今までやったことがない人にはいまいちピンとこないでしょう。

お客様を絞り、そのお客様のベネフィットを考えないような定石からはずれた経営を続けていては、いつまで経っても経営を軌道に乗せることができません。

戦い方には定石があります。

戦争のみならず、囲碁や将棋、スポーツなどにも最善とされる決まった打ち手が必ずあります。

経営もまた同じです。

だからこそ、古い兵法書である「孫子の兵法」などが経営者に人気があるのでしょう。

経営の定石はあなたが思うほど難しいことではなく、案外身近なところに、それを踏まえた経営をしている優れた経営者はいます・・・

理論的なお話しばかりではつまらないので、今回はそんな会社の1つを紹介します。

さくら住宅という会社を知っていますか?

株式会社さくら住宅は横浜市のリフォーム会社です。

二宮生憲(にのみや たかのり)社長はとても有名な方なので知っている人もいるでしょう。

2016年6月23日にテレビ東京のカンブリア宮殿という番組に出演されました。

参考 ➡ カンブリア宮殿 さくら住宅放送回

その他、さくら住宅は「日本で一番大切にしたい会社」(後援:経済産業省、厚生省、中小企業庁)の審査員特別賞を受けたり、経済産業大臣から「平成26年度先進的なリフォーム事業者」として表彰されています。

今回は、このとても有名な会社を「ターゲット」と「ベネフィット」の観点から、いかに定石どおりの経営をしているか考えてみたいと思います。

なお、二宮社長が出演されたカンブリア宮殿は、「テレビ東京オンデマンド」で視聴できます(最初の1カ月は無料)。

ターゲットの選定に失敗!?

二宮社長は50才で起業されたようですが、当初は他のリフォーム会社と同様に「価格面でのお買い得感」を前面に出した営業をしていたようです。

映像ではその当時のチラシも映っていました(古いチラシを保管していることがタダものではない)。

この段階では、さすがの二宮社長もターゲットを絞り切れていないようです。

「リフォームしたい人」を対象にしている、つまり、リフォームがしたいお客様全体を対象にしていて、そのお客様を細かく分けてターゲットを選定していません。

 

映像のチラシは「マンションリフォーム」と「戸建てリフォーム」の上下2段に分けて書かれており、それぞれリフォームパック(例えば、風呂と洗面台)として宣伝しています。

おそらく、このチラシは新聞の折り込みチラシとして配布されたものでしょう。

だとすれば、配られたのはほとんどが戸建てかマンションのはずです。

つまり、「リフォームしたい人いませんか?今ならバス・洗面台のお得なパックもありますよ」と、このチラシはお客様全体に呼び掛けているにすぎません。

もちろん、「バス・洗面台」のリフォームをしたい人というように多少絞られていますが、ほとんどリフォームしたい人全体に対する宣伝と効果は変わらないでしょう。

なぜなら、他のリフォーム会社でも「バス・洗面台」のリフォームはするからです。

おそらく、その日に各家庭に配られたチラシにはさくら住宅と同じようなものが数件あったはずです。

実際、このチラシは効果がなかったそうです。

運命的なお客様との出会い!!

業績が上向かずに悶々していた二宮社長のもとに一人のお客様が訪ねて来ました。

そのお客様は洗面台の鏡を替えたかったので、リフォーム会社をいろいろ回ったそうですが、少額工事(3万円以下の工事)のためどこも受けてくれなかったそうです。

わずか3千円ほどの売上金額にしかなりませんが、二宮社長は引き受けました。

このお客様の少額工事を引き受けたことによって、「修繕したいけど自分では直せない、どこに頼んだら愛着のある家を直してくれるのか分からない」といったそのお客様のイライラを完全に解消してあげたのです。

だから、なんでこんな些細なことで、こんなに喜んでくれるのか分からない(二宮社長談)くらい感謝されるのです。

 

そして、ターゲットを「お家の小さな修繕をしたい」というお客様に変更したことこから、二宮社長の快進撃は始まります。

そういった少額工事は誰も喜んでは引き受けるところは少ないので、さくら住宅は引く手あまたになります。

実際、さくら住宅の少額工事の受注件数は全体の43%ほどにもなるそうです。

 

なお、映像には映っていませんでしたが、是非ターゲット変更後のチラシも見てみたいものです。

ターゲットを変更しただけでお客様がひっきりなしに来るわけでは当然ありません。

ターゲットに合わせたアプローチをしたからさくら住宅に注文が来たのです。

この意味で、ターゲット変更後のチラシは以前と趣が全然違っているはずです。

 

どうでしょうか?

お客様のベネフィットを深く考え、それによってターゲットを絞り込むことによりこんなにも劇的な変化があるのです。

 

「えっ!少額工事なんか儲からないからやらないだけだよ、そんなのやるだけ無駄でしょう」

少額工事を引き受けないリフォーム会社が多いのもこういった理由からですが、それは本当でしょうか?

なぜ、少額工事の件数が全体の43%もあるさくら住宅は18年連続で黒字なのでしょうか?

本当に儲からないのか?

確かに少額工事は儲かりません、それ単独では・・・。

当然さくら住宅も、少額工事をメインに考えているわけではないのです。

お客様の少額工事を大型受注につなげるているのです。

 

普通に考えれば、修繕を必要とするような古いお家は、より大きなリフォームのニーズが高いはずです。

そして、“嫌な顔”をせずに、小さな工事を“丁寧”に行うさくら住宅は、引き続き大きなリフォーム工事を受注する可能性がかなり高いわけです。

なぜなら、さくら住宅さんの仕事ぶりは目で見て分かっているのに対して、他のリフォーム会社はどんな工事をするのか分からない(口ではいろいろ説明できますが、実際の体験に比べて弱い)のですから・・・。

 

特に金額の高い商品の契約は、騙されたくないとか粗悪品をつかまされたくないといった恐怖のため慎重になります。

さくら住宅の少額工事の引受けは、このお客様の不安を少なくし、買いやすくさせます。

さくら住宅では大型のリフォーム工事をいきなり試すのではなく、小さな工事で事前に仕事ぶりや信頼性を確かめることができます。

つまり、さくら住宅は小工事をフロントエンド商品(集客商品)としているのです。

しかも、この儲けにならない小工事を嫌な顔をせずに、丁寧に、大型工事と同じように一所懸命にします。

こういったことを地道に徹底的にすることにより、さくら住宅のお客様の忠誠心(顧客ロイヤルティという)を高めることに成功しています。

だから、大型リフォーム工事を受注する時も値引き交渉などしなくて済みますし、他のリフォームもさくら住宅にお願いすることになるのです。

実際、さくら住宅の売上ベースでの構成割合はわずか2%にすぎません。

このことは、小工事をきっかけに大型工事をばんばん受注していることを示しています。

 

このように考えると、大型工事を大幅値引きして販売するよりもさくら住宅のような売り方の方がはるかに儲かることが分かります。

まとめ

マーケティングを実践にどう生かしていけばよいか分からないという人もいるでしょう。

確かにターゲット、ベネフィットなどの聞きなれない横文字を並べられて説明されても、どこか遠い世界の話のように感じます。

しかし、大企業の事例ではない、私たちの身近な会社がマーケティングの「定石」どおりの経営でうまくいっているのを目の当たりすると、やってみようかなと思ったりするものです。

今回はそういった狙いもあって、地元横浜市の有名企業である株式会社さくら住宅を取り上げてみました。

 

リフォームは価格競争の激しい血で血を洗うような業界です(中小企業のほとんどがそうですが)。

しかし、もうこの業界では儲からないという過酷なレッドオーシャンの戦いでも、戦略家の経営者は大きく勝つことができます。

さくら住宅はこのことを示しています。

他業界のことと考えずに、他の業種の方もヒントを得ていただきたいと思います。

なぜなら、戦い方の定石はどこの業界でも同じなのですから・・・。

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