旅行代理店の株式会社てるみくらぶが27日に破産手続きに入りました。
NHKの報道によると、
『てるみくらぶは、航空会社から売れずに余った席などを安く仕入れて、格安の海外ツアーを企画し、インターネットを通じて広く販売することで成長してきました。
しかし、各航空会社が経営の効率化を図るため機体の小型化を進めるにつれ、座席が余らないようになり、割安な価格での確保が難しくなっていきました。
また、おととしからシニアの旅行客を獲得しようと新聞広告を強化した結果、経費がかさむようになり業績が次第に悪化したということです。』
参照:http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170327/k10010925891000.html
今日は、てるみくらぶの話題から安売りについて考えてみたいと思います。
東京商工リサーチによると、平成28年9月期には売上高196億円弱だったそうですが、平成26年9月期から営業利益が赤字になっているそうです。
参照:http://www.tsr-net.co.jp/news/tsr/20170327_01.html
営業利益というのは、粗利から人件費や広告宣伝費などの販売管理費を控除した後の金額です。てるみくらぶはこの金額がマイナスだということです。
営業赤字だと、その直前の項目(人件費や広告宣伝費)に主な原因があるように感じてしまいますが、根本的な原因は別にあります。
そもそも一般的に、てるみくらぶのようなオンライン旅行代理店は店舗費用は少なくてすみますが、商品を認知してもらうための広告宣伝費は大きくなる傾向があります。
では、同社の経営悪化の主な原因は何でしょうか?
それは“無理な”安売りです。
つまり、当初の「安く仕入れて、広く安く売る」という薄利多売のビジネスモデルが崩れてしまったのが原因です。
前述したように、たとえば「売れずに余った座席」は航空会社の経営効率化のためどんどん少なくなっていきます。
さらに、小回りの利く小規模の同業は増えて競争は激化してきました。
つまり、需要(仕入側)が供給(航空会社)に比べて圧倒的に多くなってしまったのです。
そうなると、価格(仕入価格)は高くなるのは必然です。
最近では、大手と同程度の仕入れ価格が増えてきたそうです。
こうなると、てるみくらぶは途端に不利になります。
一定額以上の利益を出さなければ、でかい体を維持できなくなるからです。
加えて、てるみくらぶはインターネット販売という軸からもブレてきました。
てるみくらぶはインターネットでの販売で急成長しただけに、それについては独自のノウハウはあったかもしれません。
しかし、一昨年からのシニアのお客様層を対象にした新聞広告については、ノウハウや費用対効果のデータを果たして持っていたのでしょうか?
おそらくインターネット販売で成功しているような会社は、てるみくらぶのような急転回(販売方法の変更)はしないはずです。
小規模で試し成功してから大きく展開していくはずです。
つまり、このような会社は広告費の費用対効果に対して非常に神経質なのです。
てるみくらぶは、費用対効果の考え方を持たぬまま一定の広告費をかければ売上があがるという過去の成功体験にとらわれていたのではないでしょうか?
だから、効果がないにもかかわらず(営業赤字)、大々的な新聞広告を打ったのではないかと疑ってしまいます。
経営が悪化してくると、どうも打ち手が雑になり悪手が多くなるように感じます。
それでは、てるみくらぶはどうすれば良かったのでしょうか?
てるみくらぶが体を維持するための一定額以上の利益を出していくためには、
・費用を削減する
・売上を大きくする
の2つしかありません。
「費用を削減する」ために仕入価格を抑えるのは、前述したような経営環境から難しそうです。
となると、販売管理費の中の大きな費用、たとえば人件費などを削減していくしかありません。
しかし、人件費や広告宣伝費を減らしていくと、「広く売る」ことは難しくなりそうですね。
なぜなら、誤解を恐れずに言えば、「広く売る」ためにはより多くの費用がかかるものだからです。
一方、売上を大きくするためには「より安売りして、より広く売る」か「売値を高くして、狭く売る」しかありません。
このうちの前者は前提が崩れてしまってきているので(安く売るためには安く仕入れないと利益がでない)、ちょっと無理があります。
だから、てるみくらぶは「売値を高くして、狭く売る」という方向性を考えておくべきでした。
それもかなり前から入念に準備して・・・。
私たち中小企業経営者は販売単価のアップは、最初から除外していることが多いと思います。
なぜなら、高く売るためには相当、頭を捻らなくてはならないからです。
だからどうしても、安売りで勝負しようとしてしまいます。
しかし、これからの経営環境を考えると(日本では買う人がどんどん少なくなっていく)、売値のアップについて真剣に考えておく必要があるのかもしれません。
てるみくらぶのように、もしもの時に打ち手を間違えないように・・・。