会計を苦手とする経営者は多いのではないでしょうか。
しかし、経営者のあなたにとって会計は単なる道具にすぎません。
日記帳に日々の出来事を記録するのと同じように、会計は取引の単なる「記録・整理術」なです。
そして、会計はあなたのビジネスに必ず役に立つものです。
だから、難しいと考えてまったく触れないのはとてももったいないことです・・・。
1.会計は記録整理術です・・・。
会計は単なる記録・整理の方法です。
日々の出来事を日記に記すのと同じです。
違うのは、日記は自由な形式で(絵や文章など)書くことができますが、会計は「簿記」というルールに則って記録します。
簿記についても経営者であるあなたは、深く理解する必要はありません。
あなたが目指すのは、自分のビジネスの状態を府願して見られるようになることなのですから。
私はこのような鳥の目で自社を知る会計を「社長の会計」と呼びますが、簿記を完全に理解しなければマスターできないものではないのです。
つまり、細かい簿記の知識の延長線上に「社長の会計」があるわけでないということです。
そうでなければ、会計を使うアナリストや投資家は簿記の資格を持たなければならなくなってしまいます。
2.会計の仕組みは簡単です!!
深く会計を理解する必要はないとは言え、決算者が出来るまでの仕組み自体を知って損することはないので説明しましょう。
会計は簿記というルールに従って帳簿に“取引という事実”を記録・整理し、決算書を作成していく作業ですが、この仕組みは簡単です。
簡単で便利であるから、世界中の会社が会計を使うわけです。
3.記録することが会計のキモです!!
3-1 何を記録するのか?
日記は日々の出来事をなんでも記録できますが、会計は「取引」だけを記録します。
取引はたとえば、「(お金を払って)パソコンを買う」といったことです。
基本的に「何かを“犠牲(上の例ではお金)”にして別の何かを“獲得(上の例ではパソコン)”する」というのが取引の基本的な姿(本質)です。
基本的といったのは、“犠牲”と“獲得”が成り立たない取引もあるからです。
例えば、お金は払ったが、別に獲得したものがない寄付金などがそれです。
しかし、ビジネス上の大部分の取引は“犠牲”と“獲得”が成立しますので心配する必要はありません。
3-2 どうやって記録する?
記録する「取引」が“犠牲”と“獲得”という2つの顔を持つ以上、2つのメモに記録するのがいいでしょう。
たとえば、「×月×日にM商店で現金800円を払ってコピー用紙を買った」としましょう。
左のメモが“犠牲”、つまり「お金を払った」ことについての記録です。
そして、右が“獲得”、つまり「コピー用紙を得た」ことについての記録です。
なお、右のメモの「消耗品費」というのは何だと思う人もいるでしょう。
消耗品費は勘定科目という会計の言葉です。
コピー用紙は、使えばなくなっていくもの(つまり“消耗”していく)だから会計では「消耗品費」と表すのです。
また、「消耗品“費”」が“獲得する”といったイメージではないと感じる人がいるかもしれません。
費用は“獲得する”というより“使う・消費する”イメージだからです。
これについては「お金を払って、“コピーする手段(コピー用紙)を得た”」と考えてもらえばいいでしょう。
例えば人件費なら、「お金を払って、仕事を手伝ってもらう手段を得た」ということになります。
4.そして整理する!?
4-1 記録の段階ですでに整理されている!?
実は、すでに記録の段階でグループ化して整理されています。
コピー用紙を買った場合、“獲得”のメモは「コピー用紙代」でもいいのです。
しかし、そういう記録の仕方だと、無駄に項目が多くなってしまいかえって混乱します。
だから、「グループ」を決めて似たようなものはそこに入れるのです。
これは、電話帳の連絡先を「友人関係」、「会社関係」や「家族」などにグループ分けするのと考え方は同じです。
「消耗品費」などの勘定科目がこのグループ名にあたります。
グループを決めることにより、例えばティシュを買った場合は「ティシュ代」、ペンを買った場合は「ペン代」とすることなく「消耗品費」という大きな区分で管理できます。
4-2 整理棚にラベルを貼りませんか?
記録の段階でグループ化した「勘定科目」は整理するための“ラベル”でもあります。
何のラベルかというと、記録する時に作ったメモを収納するキャビネット(整理棚)のです。
キャビネットは基本的に2台あり、「貸借対照表」と「損益計算書」という名前が付いています。
「貸借対照表」のラベル、「損益計算書」のラベルはすでに貼られていますので、“メモ”を収納するのに迷うことはありません。
もう一度メモを見てください。
この2つのメモを早速、キャビネットに収納しましょう。
左側は「貸借対照表」というキャビネットの「現金」というラベルの貼ってある引き出しに、右のメモは「損益計算書」の「消耗品費」というラベルの引き出しです。
なお、「社長の会計」でも、「勘定科目」について“ある程度の”知識はなければなりません。
なぜなら、自社の状態を鳥の目で見るためには、それぞれの勘定科目の内容は具体的にはどんなものか知る必要があるからです。
しかしながら、恐れる必要はまったくありません。
なぜなら、勘定科目のほとんどはこういった内容なんだろうとイメージできるからです。
たとえば、「水道光熱費」の中に人件費が入っているとは思わないはずです。
若干、「貸借対照表」のキャビネットは取っ付きにくいと感じるかもしれませんが、おそらくあなたがイメージしにくいと感じるのはそんなに多くないはずです(私にとっては麻雀の役を覚える方がよっぽど難しいように思えます)。
ですから、自社の決算書を見て、これなんだろうというような勘定科目は嫌がらずに税理士さんに聞きましょう。
4-3 決算書の出来上がり!!
1年の経営活動で、キャビネットのそれぞれの引き出しには多くのメモが収納されています。
これを集計して出た答えがあなたの会社の決算書の数字です。
そんなに難しくないですよね。
もちろん、実際の取引を記録するのはもっと複雑ですが、あなたのマスターすべきは「社長の会計」です。
「社長の会計」は、会社の決算書がどのような過程で出来上がるのか全体構造が分かればいいのであって、会計の細々とした周辺知識(こういった取引はどのような勘定科目を使う)など必要はありません。
そして、会計の全体構造を把握したうえで、あなたのビジネスの状態を知るための「知識とスキル」をピンポイントで学んでいけばいいのです。
5.まとめ
中小企業経営者の中にはろくすっぽ決算書を見ない人もいます。
おそらく、このような経営者の方は「会計」が専門的なものであり、自分には難しいと思っているのでしょう。
会計を商売とするなら、確かに複雑な会計の世界を理解する必要はあります。
しかし、「会計」を単なる道具として考えるなら、そのような難しい世界へ足を踏み入れる必要はありません。
むしろ、遠回りせずに、自社の状態を鳥の目で見るために必要な「知識・スキル」をピンポイントでマスターしたほうがいいでしょう。
今回は、あなたの会社の決算書が出来上がるまでの仕組みについて見てきましたが、そんなに難しい話でないと思ったなら、是非、自分の会社の決算書も毛嫌いせずに見てください。
きっと、今までとは違って見えるはずです。