10年以内の廃業率は96%、20年以内に残る起業は1%もないといったことを聞いたり、目にしたりしたことがありますか?
起業家志望の人にとっては大問題です。ほぼ廃業が約束されているような世界に誰が好きこのんで飛び込んでいくのでしょうか?
今回は、この怖い話を考えてみたいと思います。
こんな時は、冷静になることが肝要です。
何でも聞くところによると、このお話しのソースは国税庁のデータであるとか。
ソースデータの話はひとまず置いといて、まず肌感覚で考えて見ましょう。
あなたは10年前に訪れた旅行先に行きます。
なつかしさを感じながら駅に降り立ったあなたは、100軒ぐらい営業している商店街のレストランで10年前に食事をしたことを思い出します。
料理はおいしいし、店主の人柄も気さくで会話も楽しかったのでまた行ってみようと思ったのです。
いざ、商店街にたどり着いてみると、店がない!!
まぁ、これはよくあるケースです。
しかし、商店街を一望してみると、知っている店がほとんどない、わずか4軒ほどだ。もうほとんど、違う商店街です。
確かに地方の商店街などは苦戦しているというお話しはよく聞きますが、いくらんでもこの数字は極端なような気がします。
つまり、肌感覚でこの話は怪しい。
そもそもデータはあるのか?
根拠となるデータについてインターネットで探ってみると見つかりません(私は見つけられませんでした)。
国税庁のような公の機関のデータが取れないということは考えにくいので、データソースも怪しい感じがしてきます。
「ソースがない」ので肌感覚で判断しましょうというのも能がないので、さらに探ってみます。
ありました。
中小企業庁が公表している中小企業白書(2011年度版)の中に見つけました(第3部 第1章 第1節2 第3-1-11図)。
ただし、こちらは「生存率」。廃業とか倒産とかインターネットに入力しても出ないわけです。
ちなみに、無料で中小企業白書はダウンロードできます。
また、ソースを確認したい方は以下のアドレスからどうぞ。
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/h23/h23/
この資料によると、10年でも約7割の企業が、20年後には約5割の起業が生存するそうです。
言い換えれば、10年で退出するのは約3割、20年後には5割です。
この数字を大きいと思うか、小さいと思うかは個人の考え方によりますが、少し安心できるのではないでしょうか?
また、このデータは私たちの肌感覚にも近い感じがします。
まとめ
どうやら、巷で噂される「廃業率」に関する話は都市伝説の類のようです。
しかし、このような都市伝説に惑わされて、起業をあきらめてしまう起業家志望の方がいるとしたら、悲しいですね。
私だって、この都市伝説を信じたら10年後に4%(生存する方)の方にいるなんて思わないですもの。
生存した方から見れば、この厳しい数字を超えたということで自慢できるかもしれませんが。
約3割が10年以内に退出するという数字もそれなりに厳しいと思います。
しかし、そのリスクを超えるぐらいすばらしいことも起業にはあると思いますので、どうか起業家志望の方は夢を実現するために頑張っていただきたいと思います。
なお、この都市伝説は信憑性のあるようなソース先と切りの悪い数字を使っているところが”ミソ”なのでしょう。
人はこのような情報の前では「思考停止」になってしまうということがよくわかります。
この点については、いずれ記事にしたいと思っています。