今日は「企業家精神(起業家精神)」についての話です。
ブリタニカ国際大百科辞典によると、企業家精神とは『新しい事業や企業を創造するために要求される態度や発想、能力を総称したもの。独立心、達成動機、野心、常識にとらわれない自由な発想などが企業家精神の中核をなすものと考えられている』そうです。
起業を目指していると、そもそも自分は起業家になる素質がないのではないかと思ったりします。
「企業家精神」を調べてみると、どれも自分に遠いような・・・。
しかし、企業家の特質については、あまり気にしないほうがいいのではと思います。
その理由は・・・。
なお、起業を目指す方は「起業家精神」と考える方もいると思います。
しかし、一時的な起業に特有の精神(マインド)はないと思います。
なぜなら、新しい事業の創造など、つまりイノベーションは起業してからのどの段階でも必要だからです。
ですので、”企業家”精神に用語は統一してお話しします。
一般的なイメージは?
企業家精神というと松下幸之助氏、稲盛和夫氏などのカリスマ経営者を思い浮かべる人もいるでしょう。
一般的に企業家精神について次のようなイメージを持たれているのではないでしょうか?
- 困難に好んで立ち向かう
- リスクを恐れない
- アイディアを実現することが好き
- 責任感がある
- 自分に厳しい
- 他人の批判を恐れない
これらの特質が自分にあるようでないような・・・。
でも、当てはまるのは少なそうだなぁ。
そうだ、起業する前に精神修養から始めよう!!
これではいつまで経っても起業はできそうにありません。
精神修養には、ここまでの水準なら満点という確かな到達点がないからです。
そもそもマインドの話なのでしょうか?
確かに、上であげた企業家精神はどれも必要ないとは言えません。
あった方が絶対にいいに決まってます。
しかし、これらの気質を備えていない人は企業家に向かないのでしょうか?
ここで、ピーター・ドラッカーが「企業家精神」についてなんと言っているか見てみましょう。
『企業家精神とは気質ではなく行動である』(イノベーションと企業家精神 ダイヤモンド社)。
つまり、忍耐力があるとか、自分に厳しいというようなマインド(精神)は関係ないと言うわけです。
ドラッカーは『私は、いろいろな気質の人たちが企業家的な挑戦を成功させるのを見てきた』(前掲書)そうです。
起業するうえでなんとも勇気づけられるお言葉です。
”行動する”ためには何らかの意思決定を行わなければなりません。
そして、ドラッカーは意思決定を行うにあたって、確実性を求める人は企業家に向かないと言っています。
『確実性を必要とする人は、企業家に向かない。だがそのような人は政治家、軍の将校、外国航路の船長など、いろいろなものに向かない。それらのすべてに意思決定が必要である』(前掲書)。
なぜ、リスクをゼロにしたい人(確実性を求める人)が企業家に向かないかの理由については、こう語っています。
『経済活動に携わる者は誰でもリスクを冒す。なぜなら、経済活動の本質は現在の資源を将来の期待のために使うこと、すなわち不確実性とリスクにあるからである』(前掲書)。
つまり、企業家精神は「リスクを許容したうえで(経済活動の本質上、ゼロにはできない)、意思決定し行動する」ことだと思います。
しかし、行動に至らない起業家もいるでしょう。
これは、本人がリスクを”許容”したつもりでも、心の底の部分では「確実性」を求めているからではないでしょうか?
また、リスクを許容し意思決定を行っても、やはり最後は”リスクを恐れずに、それに打ち勝つ精神”のようなものがなければ行動できないと考える方もいるかもしれません。
しかし、私はやはり「気質は関係ない」というドラッカーの企業家精神をとりたいと思います。
リスクはゼロにできないまでも、リスクを必要以上に恐れない、自分が許せる範囲まで下げることは可能です。
そして、そのためには
『その(企業家精神)基礎となるのは、感ではなく、原理であり方法』(前掲書)
を学ぶことが必要です。
気質はなかなか変えられませんが、ドラッカーの言う企業家精神は後天的にいくらでも伸ばせそうです。
実際にドラッカーは次のように言っています。
『意思決定を行うことができる人ならば、学ぶことによって、企業家的に行動することも企業家となることもできる』(前掲書)。
まとめ
起業を目指していると、根本的な不安を持つ時があります。
そもそも、企業家”精神”が自分にはないので、起業には向いていないのではないかと。
しかし、そのような人にはドラッガーの「企業家精神」の定義がお勧めです。
気質ではなく行動が”企業家精神”であると、ドラッカーは言います。
気質を変えていくのは大変ですが、行動なら変えられます。
行動できないのは”知らない”からです。
”知らないから”恐怖で足がすくみます。
そして、恐怖に打ち勝つためには、勇気があるなどの気質ではなく、原理であり方法を学ぶことです。