銀行がお金をなかなか貸してくれない・・・。
中小企業の経営者にとっては資金繰りは切実な悩みであります。
「うちみたいないい会社に銀行はなんでお金をかしてくれないんだ!!」
資金繰りにひっ迫すると、銀行に対して怒りや憎しみを感じることもあるでしょう。
銀行がお金を貸さないのには理由があります。
それは、あなたの会社が“銀行にとって”いい会社でないからです・・・
銀行の忘れられない悪夢!?
かつて銀行が経験した悪夢を知ると、銀行にとっていい会社がどんなものかわかります。
銀行が経験した悪夢とは・・・、バブル崩壊です。
経験していない人はわからないかもしれませんが、毎日がお祭りのような狂乱の時代でした。
バブル以前の銀行のイメージといえば、お堅い、誠実、地味などのようなものだったと思います。
ですが、このイメージに反し、銀行もこのバブルの渦に巻き込まれていきます。
それを象徴するのは大手行の頭取が発した次の言葉です。
「向こう傷を恐れるな!!」
要は、金儲けしまくれということです。
真面目な人ほどたがが外れると怖いものですが、銀行も暴走します。
しかし、悲しいかなバブルであった故、はじけます。
そして、残されたのは途方にくれるほど大量の不良債権(返してもれえない貸付金)です。
銀行は各行単体で動いているわけではなく、金融機関全体としてシステムとして機能します。
そして、システムで動いているということは、どこかに不具合(例えば倒産)が生じれば全体に波及する可能性があります(連鎖倒産)。
金融システム全体が崩壊すれば、日本経済全体が奈落の底に落下します。
なぜなら、経済社会に血(お金)が回らなくなるからです。
ここで、本来真面目な性格の銀行は、「大変なことになってしまった!!」と我に返ります。
真面目な性格の人ほど、ことの重大さに気付いたときには落ち込みも激しいものです。
ましてや、銀行によっては公的資金というみんなのお金で助けられていますから。
これが、銀行の悪夢、そしてトラウマになっています。
安易な貸出のツケ~不良債権処理と金融検査マニュアル
しかし、まだ大量の不良債権が残っています。
これを処理していかなければ金融システムは安定しません。
そこで、行政が金融検査マニュアル(行政がこのマニュアルで金融機関を厳しくチェックする)というものを作成しました。
チェックされる側の銀行はこのマニュアルに沿って、各行が査定マニュアル(自分の銀行をチェックするため)を作成します。
銀行は自分自身を厳しくチェックしなければならないため、債権(企業に貸したお金)を回収できないなら、それをしっかりとゼロとして評価する必要があります。
これは営利企業である銀行にとって、利益を圧迫しますから非常に痛いことなのです。
しかし、金融システムの安定という重大事項に係るため、銀行の利益など二の次です。
とにかく、このマニュアルに従って、融資実務は粛々と進んでいきます。
そして、この融資のキモは、簡単に言うと次のようになります。
- 返してくれそうにない企業には貸さない(貸し渋り)
- 返せなくなりそうな企業からは早めに回収する(貸し剥がし)
この融資実務をスムーズに進めるためには、担当の主観を排した客観的な基準を使う必要もあります。
そこで、選ばれた基準が財務データ(決算書)を利用した融資というわけです。
財務データに基づく融資は、基本的に誰が判断をしても同じ結果になるわけですから、ある意味公平でもありますし、実行までのスピードも早いからです。
そして、このような融資により、銀行の不良債権は激減します(20年ほどかかりましたが)。
不良債権の激減という成功体験からか、あるいは、リスクの大きな相手には貸さないといったことが、そもそも銀行の本来の姿勢に合っていたのかわかりませんが、この財務データ偏重の融資実務は完全に定着します。
つまり、銀行からスムーズに借りるためには・・・
冒頭で、銀行から融資を引き出せないのは“銀行にとって”いい会社ではないからだと言いました。
そして、ここまで見てきたように銀行にとっていい会社とは、「財務上問題のない」会社、つまり、貸したお金をちゃんと返してくれる会社ということです。
財務上健全な会社は、銀行の融資が受けやすいだけでなく、会社の足腰を強くします。
銀行の融資の判断基準(財務指標)を使って、積極的に財務体質の改善を図っていきましょう。
なお、銀行が採用する財務指標の詳細についは、またの機会に書きます。
まとめ
バブル崩壊後の金融システムの安定のため、銀行は財務指標によって融資をするかどうか決定するようになりました。
不良債権の激減という成功体験とそもそも銀行の本質的な姿勢(返してくれそうにない人に貸さない)から、この財務指標偏重の融資は完全に定着しています。
そのため、私たちが銀行から融資をスムーズに受けるためには、この財務指標を改善する必要があります。
なお、最近では財務指標にもとづく融資が行き過ぎたからか、「事業性評価」というものがスポットライトを浴びています。
このことについても当ブログで書いていきますのでご期待ください。