創業資金をすべて自分で用意できる人もいれば、そうでない人もいます。
資金以外の準備がすべて整っていれば、融資を受けることで時期を逃さず事業を始めることができます。
一方、金融機関は、事業プランを実行するために資金が必要な起業家に融資して、適正な金利を得て元金を確実に回収できれば、ビジネスが成り立ちます。
仮に、貸付先の事業が順調に推移し融資期間中に資金繰りに問題が生じなければ、借り手にとっても、貸し手にとっても融資取引は成功したといえます。
ところが、創業から10年後に事業を継続できているのは全体の1~2割程度しかありません。つまり、起業しても大部分の事業はうまくいかないということです。
そのため、民間の金融機関は、回収リスクが高すぎる創業融資には慎重な対応をとらざるを得ないのです。
公的な融資制度でも「選別」される
民間企業が融資をしづらい分野を補完するために、公的な融資制度があります。
起業にあたり選択できる融資制度は事実上「日本政策金融公庫の新創業融資」または「信用保証協会を利用した自治体の制度融資」のふたつです。
ただし、公的な支援が用意されているといっても、すべての希望者に資金提供できるわけではありません。
起業を促進して産業の活性化を図るという政策目標の達成のために、事業の成功が見込める会社であるかどうかを慎重に検討して融資の可否が決定されます。
審査で重視されるポイント
審査ポイント① 「経営者はどんな人物なのか」
審査ポイント② 「成功できそうな計画を立てているか」
「自分が計画している事業は、借入金を利用することで、確実に成功できる!その舵取り役として自分は適任だ!」
という「経営者の主張」を審査の過程で発信して、
相手に納得してもらえれば資金調達は成功します。
創業計画書で主張する
日本政策金融公庫の新創業融資制度では創業計画書の提出が求められます。この創業計画書は「経営者の主張」を展開できるツールとして融資審査では最も重要です。
公庫所定の「創業計画書」の記載項目は以下の通りです。
1.創業の動機
2.経営者の略歴、
3.取扱商品・サービス
4.取引先・取引関係等
5.従業員
6.借入の状況
7.必要な資金と調達方法
8.事業の見通し
上記の項目はすべて、「経営者はどんな人物なのか」、「成功できそうな計画を立てているか」を見極めるための質問事項です。
記載事項を二つのポイントに分類すると次のようになります。
「経営者はどんな人物なのか」 :1、2、6、7(自己資金)※
「成功できそうな計画を立てているか」 :3、4、5、7、8
※ 創業のために計画的に事業資金を蓄えてきたことは、事業に本気で取り組もうとする経営者の姿勢の表れとして公庫は重視します。もちろん、自己資金があるほど、借入額を抑えることができ、資金繰りに余裕ができることから、資金計画の面でも評価は高くなり融資を受けられる可能性が高くなります。
創業計画書の仕立て方
記載項目の中には、書くことが思い浮かばない、どのように表現すべきか迷ってしてしまう、ということがあると思います。
そういう場合には、まず「経営者はどんな人物なのか」、「成功できそうな計画を立てているか」という審査の重要ポイントを頭の隅におきます。(ステップ1)
そして、貸手の視点に立ち、どのような経営者なら融資できるか、どのような計画であれば将来の成功を納得できるかをイメージして、自分自身・自分の事業に照らしてみます。(ステップ2)
その上で、創業融資ノウハウを紹介するウェブ・ページや書籍の具体的な文例や創業計画実例を参考にして、大味で構わないので創業計画をひと通り書き上げてしまいます。(ステップ3)
いったん書き上げた創業計画書に対して、(ステップ1)、(ステップ2)、(ステップ3)を何度か繰り返し適用することで、資金調達成功という作成目的から外れることなく、自分の事業固有の強みを反映した説得力のある創業計画が仕上がるはずです。
まとめ
今回紹介した創業計画書の作成アプローチは、どんなケースにもマッチするベストな方法とはいえませんが、初めて事業計画作成に取り組むという方には一度試していただきたいお勧めの方法です。