あなたの売っているモノはなんでしょうか?
売っているモノを“本体”だけだと考えてしまうと、競合品と差別化するためにスペックを引き上げることを考えるのは普通でしょう。
それができないなら、価格での勝負となります。
しかし、スペックで勝負するのは経営資源の乏しい中小企業には難しいでしょう。
さりとて、価格での勝負ではあなたも知っているようにひどく消耗します。
けれども、あなたが思う以上に、価格や機能以外に攻めどころはあるものです・・・・。
売っているモノは“本体”だけなのか?
売っているモノの構成要素を“本体”だけと考えるとどん詰まりです。
しかし、売っているモノをよく観察してみると、決して“本体”だけで構成されているわけではありません。
あなたの売っているモノは図のようないろいろな要素から構成されています。
“モノ”自体は、
・本体(品質、性能、デザイン)
・パッケージ
・ブランド名
から出来ています。
重要なことは、“モノ”の三本柱が「ベネフィット」の土台の上にあるということです。
お客様は商品自体を買うのではなく、「ベネフィット」を得るために買っているのだから当然です。
つまり、この「ベネフィット」に最適化するような形で“モノ”自体は成り立っていなければなりません。
たとえば、お客様が「ラグジュアリーでステイタスを感じるような車」を求めているのに、「スピードの出るかっこいい車」を提供してもしょうがないわけです。
そして、ベネフィットについては「ステイタスを感じたい」人もいれば、「かっこいいと思われたい」人もいるようにお客様個々人で違いますから、当然にお客様が特定されている(ターゲットを絞っている)ということにもなります。
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さらに、あなたが提供する“モノ”にはサービスが含まれています。
ここでいうサービスは値引きなどのような一般的に言われるサービスではなく、動かすために必要な「取付設置」などのようなものです。
取付、アフターサービス(メンテナンスなど)、配達などは、あなたの提供する“モノ”にもあるかもしれません。
また、分割払い、保証などもお客様の利便性をかなえるので、ここでいうサービスに該当します。
なお、物理的な“モノ”を売らないようなサービス業の場合は“本体”は技術などになるでしょう。
また、パッケージはそのサービスを提供する「空間」、たとえばお店になります。
お店などのような「空間」を持たない配送業などの場合は、荷物を運ぶ車(ぼこぼこの車では安全に荷物を運んでくれるか心配になる)や人(不潔な人に荷物を運んで欲しくない)と考えるといいでしょう。
参考過去記事 ➡ 売上を増やしたいなら、真の顧客ニーズを理解せよ!
攻めどころはたくさんある!?
売っている“モノ”を分解して考えると、スペックや価格に頼らなくとも、攻めどころがまだあることが分かります。
「そんなんで、売れるわけがないだろう!」と疑問を持つ方もいると思いますので以下、事例を紹介しましょう。
①パッケージを変更した事例
・装丁を変更しただけで売れた「人間失格」
「人間失格」は言わずと知れた太宰治の作品です。
こういった古典的な名作は最近売れませんが、出版社の集英社は新装丁に漫画家の小畑健氏(「DEATH NOTE」で有名)を起用しました。
出典:amazon
もちろん、作者の太宰治はとうの昔に亡くなっているので、本体である「小説」そのものや人間失格というネーミング自体は変えられません。
だから、売るためにはパッケージである装丁を変更するしかないわけです。
装丁を変更することで、こういった古典的な名作としては異例の7万5千部を、わずか1カ月半あまりで売り上げたそうです。
・パッケージを変えただけで売上8倍の「あきたこまち」
“本体”のお米はそう易々と品質アップを図れるものではありません。
また、「あきたこまち」というブランドが確立されていますからネーミングも変えられません。
そこで、パッケージを「萌え系キャラ」に変更しました(イラストは西又葵氏)。
出典:うご農業協同組合
この変更で「あきたこまち」の売上を8倍にしました。
あなたはこう思うかもしれません。
「有名な人にイラストを頼むお金なんてないし、自分でやろうにも才能ないよ!」
これらの例を出したのは、“本体”が変わらなくてもパッケージで売上を大きくアップさせることができることを示したかったからです。
もちろん、イラストのように、ブランド的な役割を持たせるようなパッケージの変更だけではありません。
パッケージに“チラシ”的な役割を持たせることもできます。
出典:マイレピ
この「JOY」のパッケージで注目していただきたいのは、「しつこい油汚れもするっする!」です。
「JOY」は有名な家庭用洗剤であるのでブランドで買われているように思えますが、パッケージにしっかり“チラシ”的な役割を持たせています。
こういったチラシ的役割を持つパッケージの商品は、有名商品でなくても(大企業の有名商品でないからこそかもしれませんが)スーパーなどでよく見かけます。
こういった例は私たち中小企業経営者にはとても参考になるのではないでしょうか?
最後に、パッケージについてとても参考になるサイトを紹介します。
参考リンク1:食品パッケージ例
参考リンク2:公益社団法人日本パッケージデザイン協会
参考リンク3:パッケージデザインに学ぶ
②ネーミングを変更した事例
・大ヒットした「鼻セレブ」
「鼻セレブ」の変更前の名前を知っているでしょうか?
答えは、「モイスチャーティッシュ」です。
「モイスチャーティッシュ」を覚えている人はどれくらいいるでしょう(ちなみに、私は花粉症なので覚えています)。
おそらく、ほとんどの人はそんな商品があったことを知らないでしょう。
「モイスチャーティッシュ」自体はダブル保湿といったような機能のアップを図っている商品です。
しかし、お客様にそのいいところが“伝わらない”のであまり売れませんでした。
そこで、「鼻セレブ」へネーミングを変更しました(と同時にパッケージも変更しています)。
この変更により、売上が3倍になったそうです。
・「おーいお茶」に変えて売上が6億円から40億円へ
変更前の名前は「煎茶」でした。
正直、あまり買いたいと思わない普通すぎる名前です。
中身を変えずに、ネーミングを「おーいお茶」に変更したところ(実際にはパッケージも変更してますが)、売上がそれまでの6倍に伸びたそうです。
ネーミングの変更が爆発的なヒットにつながった事例はその他にも「通勤快足」、「天使のブラ」、「カレーメシ」などいろいろあります。
お金のかかるスペックの向上などと違い、自分の頭一つで売上を向上させることができるネーミングの変更(パッケージのチラシ的役割も同じと考えていいでしょう)は、私たち中小企業経営者がもっと注目すべきものでしょう。
参考リンク:刺さるネーミングって大事!改名したら爆売れしたアノ商品
③付随サービスを考える
アート引っ越しセンターの付随サービスが私には思い浮かびます。
同社の靴下履き替えサービスをご存知でしょうか。
引っ越し作業の際、新居では真新しい靴下に履き替えるというサービスです。
引っ越しサービス自体は、家から家へ荷物を問題なく運べば完了します。
しかし、アート引っ越しセンターは「新居に古い家で履いていた汚れた靴下で上がられるのは嫌だ」というお客様の繊細なニーズに応えることで売上を急増させました(今は元気がありませんが)。
また、病院での待ち時間をスマホなどで知ることができるサービスはどうでしょうか?
病院の医療サービスも基本的にはお客様を診療すれば完了です。
しかし、お客様の待ち時間のイライラや不満を解消したいということからこのサービスは生まれたのでしょう。
付随的サービスは土台である「ベネフィット」に着目することで、それぞれのビジネスの基本と考えられているサービスを超えて新しいサービスを生み出すことが可能になるのです。
病院の待ち時間の告知システムはともかくとして、アート引っ越しセンターのやったことは本当に些細なお金の掛からないことです。
このようなことで同業と大きく差を付けられるという話に、あなたは勇気づけられないでしょうか?
特に、B to Bのビジネスは、パッケージやネーミングで同業に差をつけることが難しいので、付随サービスでの勝負を考えて見るのもいいのかもしれません。
付随サービスは使ってみなければ分からないので、同業他社は真似しにくいという点であなたのビジネスを有利にするでしょう。
まとめ
商品を“本体”であると狭くとらえると、戦い方は機能や性能のアップ、デザインの改良など限定されてしまいます。
商品はお客様のニーズを満足させるベネフィットの束だと考えると、本体を入れるパッケージ、ネーミング、付随するサービスといった戦い方に広がりが出ます。
そうです、あなたの“商品”も安売り以外に戦う武器がまだまだあるのです。