不良債権を早期に発見し、貸し倒れを防ぐ!売掛金回収管理の実践方法

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商品引き渡し後の売掛金の回収について、無関心な経営者もいるかもしれません。

しかし、売掛金は実質的には得意先への貸付金と同じようなものです。

 

人にお金を貸す時に、その人がお金を返してくれるかどうかを考えない人はいないでしょう。

売掛金は貸付金とは違い、圧倒的に数は多いですが、本来は売掛金も回収できるかどうか、回収されない時にどう対処するかを事前にしっかり検討しなければならないものです。

 

期日までに入金されない売掛金は不良債権(回収困難な債権)となる可能性があり、ほったらかしにしておくと貸し倒れてしまいます。

そして、不良債権化してから対応してもほとんどお金は回収できませんし、金額が大きければ経営を危うくする可能性があります。

 

この記事では、数の多い売掛金のなかから、不良債権を早期に発見するための簡単な方法を解説します。

また、不良債権化した売掛金にどう対処していけばいいか効果的な対応策が分かります。

1.売掛金の回収管理を甘くしてはならないワケ!?

掛け売り(信用販売)であっても、損益計算書では売上と利益が計上されます。

しかし、だからと言って安心してはいけません。

最終的に売り上げたお金が入ってこないで貸し倒れてしまうと、どんなに業績が良くても倒産するリスクがあるからです(いわゆる「黒字倒産」)。

 

倒産は、赤字を直接の原因としてではなく、売掛金などのお金が入ってこないことにより、お金が回らなくなったことで起こります(赤字が債務超過になり、倒産に至る可能性があることについてはコチラの記事をご覧下さい

 

通常、売掛金は「月末締め、翌月末払い」といったように入金日が決まっています。

だから、この約束された日までに入金されない売掛金(滞留売掛金)はおかしいのです。

 

現金(あるいは預金)で売掛金を回収することにより、“販売”が完結しますので、回収されていない売掛金は本来あってはなりません(回収できなければ、売り上げていないのと同じ)。

 

入金が遅れたのは、お客様の事情があってのことだから、催促するのは悪いと考えている経営者の方もいるでしょう。

 

しかし、このような売掛金に無関心でいると、やがてそれが不良債権化し、しかも知らないうちに増大します。

こうなってくると、あなたの会社の資金繰りは真綿で首を絞めるようにじわじわと悪化していきます。

 

ですから、この入金されない売掛金は不良債権の入口であると、経営者は深刻に受け止め、売掛金の回収管理をしっかりやらなければなりません。

 

さらに言えば、不良債権となった売掛金が貸し倒れてしまうと、挽回するは非常に厳しいのです。

 

たとえば、売上総利益率が20%の場合、信用販売で売上100万円あると利益は20万円になります。

そして、売掛金を回収することで、この利益20万円は手許現金20万円として残ります。

 

しかし、売掛金を回収する前にこの得意先が倒産して貸し倒れになると、100万円の現金を失います(仕入れで支払った80万円の現金と利益の分の現金20万円の合計)。

 

この失った現金を取り戻すためには、他の取引先から追加で500万円(100万円÷20%)売り上げる必要があります。

2.売掛金の回収管理の誤解?

中小企業経営者のなかには、会計処理さえしていれば売掛金の回収管理も十分にできると考えている人もいるでしょう。

 

もし、あなたがそう考えているなら、自社の売掛金で回収されていないものがどのくらいあるか分かるでしょうか?

「回収されていない売掛金なんてないよ!」

「(得意先)元帳を見ればすぐにわかるけど」

 

それでは、もう少し詳しくお聞きします。

回収されていない売掛金はないと、あなたはどうして断言できたのでしょうか?

本当に、元帳を見れば“すぐに”分かるのでしょうか?

 

確かに、ビジネスが順調で、お金が回っていると、滞留売掛金(回収していない売掛金)はないように感じます。

しかし、そのことと滞留売掛金がまったくないことは別です。

 

つまり、直接的な証拠により滞留売掛金がないと判断していない限り、それが存在していないとは断言できないはずなのです。

 

元帳を見れば、滞留売掛金の有無は分かりますので、直接的な証拠で判断できていると言えますが、“すぐに”は分かりません(得意先が数件なら“すぐに”わかりますが)。

 

貸し倒れが発生して売掛金の一部または全部が回収不能にならないように、滞留売掛金を素早く把握し、効果的な対策をとる必要があります。

そのためには、会計帳簿とは別に、売掛金を管理する帳簿(管理簿)を作成します。

 

中小企業は、売掛金のみならず「管理簿」を作成していないところが多いように思います。

その理由の一つは、前述したように、会計処理さえしていれば管理がうまくできると思っているからです。

 

もう一つは、端的に言ってしまえば、「面倒だから」なのでしょう。

人手不足で毎日忙しい経営者が“余計な”帳簿を作るのは大変ですので気持ちは分かります。

また、まだ貸し倒れが発生していないにもかかわらず、こういった「予防的」なことに労力を使いたくないと普通は思うでしょう。

 

しかし、連鎖倒産の危機から脱したような社長は「予防的」な管理簿の作成を重視します。

トラブルが起きてから対処してもほとんどお金が回収できないことを知っているし、こうなる前に早期に兆候を発見していたら、苦労することはなかったと後悔しているからです。

3.売掛金の回収管理方法とは?

3-1.売掛金の管理簿とは?

売掛金管理簿はシンプルなイメージでは次のようになります。

 

 

 

各得意先の残高が“いつ発生したのか”一覧表形式で分かります。

 

たとえば、「月末締め翌月末入金」という条件で、これまで入金の遅れがなければ、前月から繰り越された残高は「繰越高の1ヶ月」欄に入ります。

 

この繰越高は当月に入金されると消し込まれて残高がゼロになります(当月分の売掛金残高だけが翌月に繰り越される)。

逆に、この繰越高が当月末に入金されなければ異常ということになるので、得意先に問い合わせるなどの早急の対応をとることができます。

3-2.管理簿は自分で作らなければならないの?

売掛金管理簿は無料で良いモノがたくさんあります。

それらは、下記リンク先からダウンロードして利用できます。

 

また、顧問の会計事務所がある場合は、そちらから入手してもいいでしょう。

ダウンロードしたものにしろ、会計事務所から入手したものにしろ、あなたの会社の状況に合わせて上手に運用していくために顧問の会計事務所に相談されるといいでしょう。

 

なお、こういった管理簿は作成することが目的ではないので、運用しなければ(活用しなければ)意味がありません。

しかし、実践を積むことで、売掛金回収管理の鋭い感覚が研ぎ澄まされていきます。

4.滞留債権を早期に発見し、不良債権化を防ぐ?

4-1.入金が遅れた理由を調査し、対応を検討する!?

売掛金の管理簿で滞留債権が見つけたとして、それが本当にそうなのかまず確認しなければなりません。

当方の消込忘れなどのミスにより売掛金の管理簿上、滞留債権になっている場合もあるからです。

 

当方にミスがないことを確認したなら、先方に入金が遅れている理由を聞きましょう。

入金が遅れた理由は様々でしょう。

  • たまたま支払日を忘れてしまった
  • 支払い担当者が不在で支払処理が遅れた
  • 納品した商品に不備があったため支払いを保留している

 

あなたは相手の理由をただ受け入れるだけでなく、「資金繰りが苦しくて支払えない」という本音を隠していないか探る必要があります(本当は不良債権ではないのか確かめる)。

 

もちろん、人間であるので、“たまたま”忘れてしまうこともあるでしょう。

しかし、このような場合はすでにお金が準備されているはずですから明日には支払えるはずです。

ですから、近日中(遅くとも2、3日後)の入金を約束してもらいましょう。

 

なお、お得意様にそんな催促はできないという“人の良い”経営者もいるかもしれません。

しかし、自分に落ち度があると分かっていて、かつ支払うお金も用意されているのですから、まっとうな得意先は応じてくれるはずです。

 

また、納品した商品に不備があり、支払を猶予している得意先については、その不備について双方で確認します。

その上で、当方にミスがあるなら返品してもらい良品を送るか、減額(値引き)で対応するかなどの交渉をしていきます(入金しない理由を取り除く)。

 

これらは、今までやってこられなかった経営者にとってはタフな交渉になるかもしれませんが、得意先に対する鋭敏な感覚が身についてきます。

つまり、この得意先は、あなたの売掛金が不良債権であることを隠しているとか、実は倒産の危険があるとかといった売掛金回収のための嗅覚が発達します。

4-2.不良債権に対する対処法は?

① 内容証明郵便を送付する

内容証明郵便自体は相手先に支払いを強制する力はなく、心理的なプレッシャーを与えるだけです。

 

しかし、内容証明郵便には、「時効」で売掛金が消滅してしまうことを防ぐというメリットがあります。

 

うがった見方をすれば、支払わない得意先の中には売掛金の時効による消滅を狙っているところもあるかもしれません。

もちろん、こういった得意先に対処するためだけでなく、支払わない得意先に対しては内容証明郵便を面倒だと思わずに送りましょう。

 

なお、内容証明郵便については中小機構のJ-Net21さんがやさしく解説していますので、コチラ(J-Net21)をご覧ください。

 

また、時効については「ビジネス法務相談室」さんが、分かりやすく解説されていますのでご興味のある方はコチラ(ビジネス法務相談室)を参照ください。

②最終的には法的な対応が必要です!

はっきり言って、得意先が倒産してから売掛金の回収に動いても遅いでしょう。

倒産企業にはあなたのような債権者が多くいるため、あなたの回収額はほんのわずかばかりです。

 

売掛金の回収は早い者勝ちですから、得意先が倒産する前に速やかに回収しなければなりません。

そのためには法的な対応を検討する必要があります。

 

法的対応としては調停手続きの申し立てと 訴訟があります。

なお、当サイトは法的な問題について深く触れませんので、詳しくは弁護士などの運営しているサイトを検索していただくか、「よろず支援拠点」などの公的機関の無料相談をご利用ください。

まとめ

売掛金の回収管理が甘いと、気付いた時には不良債権化し、大きな痛手を負うことになります。

そうならないためには、入金の遅れている売掛金を素早く発見し、適切な対応を取る必要があります。

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