スタートアップ期の資金調達は公的融資の利用が一般的です。
その後、事業拡大にともない資金需要が増加すると、調達先の比重を公的融資からプロパー融資へシフトさせていく必要がでてきます。
参考記事:中小企業の資金調達 公的融資を活用
今回は、プロパー融資獲得について考えてみます。
プロパー融資は貸手のリスクが高い
プロパー融資は、信用保証協会の保証をつけずに貸手がすべてのリスクを背負う融資取引です。
民間金融機関の融資は、信用保証協会の保証の有無により、二つに分類できますが、このうち信用保証協会からの保証がないものがプロパー融資です。
信用保証協会の保証付き融資では、債務者が返済できなくなった場合は金融機関は信用保証協会から返済を受けられるためリスクは限定されます。一方、プロパー融資では借手から返済を受けられない場合の損失を金融機関がすべて負担することになります。
借手のメリット① 融資額などの制限がない
信用保証協会には、融資を受けにくい小規模会社等を支援するという目的があるため、利用できる企業規模(資本金と従業員数)の制限があり、保証限度額が定められています。一企業が利用できる限度額は2億8千万円で、そのうち無担保枠は8千万円です。
これに対して、プロパー融資は、基本的に借手と貸手の合意により取引条件を自由に決定できます。借手の信用力に応じた高額な融資獲得も可能です。
借手のメリット② 保証料がなく低コスト
プロパー融資では、保証料が不要になり資金調達のトータルコストは小さくなります。
保証協会の保証付き融資では、貸手である金融機関に対して支払う「金利」とは別に、保証協会から保証を受けるため「保証料」を支払いますが、プロパー融資では借手が負担するのは「金利」だけで済みます。
プロパー融資のデメリット
プロパー融資は、保証協会の保証付き融資と違い、銀行が全リスクを負う融資であるため、一定の信用力がある企業だけが融資対象となります。
また、業績が悪くなると、リスクに見合った高い金利や担保を求められます。これは保証付き融資でも同じですが、プロパー融資ではより厳格です。場合によっては短期資金の一括返済のような厳しい要求をうける可能性もあります。
プロパー融資に向けた対策
上述したように、プロパー融資は借手にとってメリットが大きい反面、金融機関にとってリスクの高い取引です。そのため、保証枠が残っている場合は、保証付き融資で対応したいと貸手は考えます。
保証付き融資が利用できる範囲では金融機関にプロパー融資を提案する誘因がない以上、借手からのアプローチが必要になります。
プロパー融資の障害が貸倒リスクの高さにあるのなら、貸倒リスクがそれほど高くないと金融機関が認識できることが必要です。
1.財務内容の改善
金融機関は借手の返済不能リスクを、信用格付により評価します。信用格付で一定のランクをクリアしていることがプロパー融資の条件となります。
信用格付をアップするためには財務内容の改善が必要です。
2.融資実績で信頼関係を築く
保証協会利用の融資で取引実績を積上げることで、「きちんと返済する信頼できる会社」と理解してもらうことがプロパー融資に繋がります。
はじめての融資先にプロパー融資を行うことはまずありません。まずは保証付き融資を通して信頼関係を築くことが大切です。
3.リスクの小さい融資取引から始める。
金融機関は貸出期間が長いほど、貸倒れの可能性が高くなると考えます。
この点、つなぎ融資や賞与・決算資金などの短期で資金使途が明確な案件は金融機関にとってプロパー融資に取組みやすい取引です。
まずは、これらの短期融資についてプロパーでの融資を要請してみることがお勧めです。
4.複数の借入れ候補先をもつ
既存の貸手はできるだけ今まで通り保証付き融資で対応したいと考えます。
仮に借入の選択肢がひとつの銀行しかなく、プロパーでの対応に消極的な場合はプロパー融資の獲得はかなり難しくなります。
しかし複数の銀行から融資を受けていて、さらに新規の銀行もからませれば、競争が働きプロパーでの対応などより良い条件の融資を受けられる可能性が高まります。
まとめ
プロパー融資を獲得できるようになると、資金調達の選択肢が増え、高額な融資を有利な条件で獲得することも可能となります。