あなたは、事業承継あるいは廃業はその時になればなんとかなると思っていないでしょうか?
最近、中小企業の事業承継の大変さについては新聞報道されているため、分かっている経営者も増えているようです。
しかし、廃業については簡単にできると思っている人が、まだ多いのではないでしょうか?
事業承継できなければ廃業を選択せざるを得ませんが、事業承継と同様に廃業も専門知識が必要です。
けれども、中小企業経営者の多くは家族にだけ相談したり、あるいは自分一人で決断します。
確かに、事業承継や廃業はどこに相談すれば一番いいのか分からないと思います。
そんなあなたのために、この記事ではお金の掛からない“公的な”サポートについてお知らせしています。
そのような公的なサポート機関に早めに相談し、十分な対策をとることで、引退後の人生をより幸せになものにすることができます。
事業承継か、廃業か・・・!?
日本政策金融公庫が行った「“廃業予定”企業」に対するアンケート調査で挙げられている上位3つの廃業理由は、
- 当初から自分の代で事業の廃止を決めていた 38.2%
- 後継者がいない 28.6%
- 事業の将来性への不安 27.9%
だそうです。
また、この“廃業予定”企業は、事業承継が決定している企業や事業承継は決定しているが後継者がまだ決まっていない企業に比べると、業績が良くないと回答した方の割合が高いということです。
このアンケートについて、ひねくれた見方をすれば、「“当初”から自分の代で事業の廃止を決めていた」という理由は、本当に“当初から”、つまり事前に決めていたことなのか、それとも「後継者がいない」等の理由で事後的に決めたことなのかは分かりません。
そう考えると、「当社から決めていた」という中には経営者の“強がり”も含まれていると思えるので、「後継者がいない」や「事業の将来への不安」という理由はもっと多いのかもしれません。
参考 ➡ 「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」の概要
良い廃業と悪い廃業??
廃業には「良い廃業」と「悪い廃業」があります。
悪い廃業とは、あなたが事業から引退した後に、生活資金に困るような廃業です。
反対に「良い廃業」とは、引退後の生活に困るようなことがない穏やかな生活を送ることができる廃業です。
事業価値があるのに引継ぎ手がいないため廃業を選択せざるを得ないような「廃業」はこれにあたるでしょう。
悪い廃業となる場合が多いのは、決算書が「債務超過」となっているような場合です。
反対に、良い廃業は決算書が「資産超過」になっています。
とはいえ、決算書が「資産超過」であるからといって、安心できるというわけではありません。
なぜなら、資産の中の回収不能な売掛金や不良在庫などの影響で“実質的”な債務超過になっている場合もあるからです。
本当にあなた一人で決断していいのでしょうか?
悪い廃業の場合には、様々な難しい問題があります。
- あなたが引退した後の従業員の問題(悪い廃業だけではありませんが)
- 引退後の生活資金の確保の問題
- 借入金などの負債整理の問題
これらは、法律や会計など専門的な事柄を多く含むため、あなた一人で決断できるようなものではないのです。
しかし、中小企業白書(2014年度版)によると、驚くべきことに廃業した経営者の48.1%の方は家族や親族だけに相談して廃業を決断しています。
また、28.7%の経営者は誰にも相談していません。
もちろん、家族や親族はこれまでの頑張りを称えてくれて、精神的安らぎを覚えることができるかもしれません。
しかしながら、廃業は前述したとおり、専門的な知識を必要とします。
残念ながら、家族・親族の中にそういった知識を持ち合わせている人がいない限り、良い廃業や良い事業承継に結び付くアドバイスを得ることは難しいでしょう。
参考 ➡ 中小企業白書(2014年度版)
あなたが事業承継を相談する窓口はココだ!!
適切な知識を持つ人に相談すれば、悪い廃業を回避できるかもしれません。
悪い廃業を回避できるだけでなく、あなたはより望ましい状態で引退できるでしょう(良い事業承継や良い廃業で)。
しかし、中小企業経営者は誰に相談していいのか分からない人も多いと思います。
そこで、あなたにとっておきの相談先を2つ紹介しましょう。
なお、当たり前のことですが、中小企業の多くは顧問税理士がいるはずですので、税理士に最初に相談するといいでしょう。
①よろず支援拠点
よろず支援拠点(以下、支援拠点)は47都道府県に1か所以上(地域によってはサテライトオフィスがある)設置されています(各地域のよろず支援拠点はコチラをご覧ください)。
支援拠点には様々な分野に精通している専門家が在籍しています。
支援拠点は、経営者が抱える悩みの本質的な課題を明確にし、適切な解決策を提案してくれるでしょう。
また、相談内容に応じた適切な支援機関の紹介、経営課題に対応した支援機関の連携のためのコーディネートもしてくれます。
こういった公的機関は「廃業」の相談、支援もしてくれるのかと疑問に思う方もいるかもしれません(ホームページ等では“事業承継”が全面に謳われていることが多い)。
しかし、受け付けてくれますので、心配する必要はありません(だから“よろず”なのです)。
「事業承継」と「廃業」は表裏一体であり、どちらも経営改善が必要なケースが多いので、よりよい引退をするためには支援拠点の活用はあなたを強力にサポートしてくれるでしょう。
支援拠点の相談料は何度利用しても無料です。
もちろん、他の支援機関(弁護士や税理士などの外部専門家)を利用しなければならないような場合でも、あなたの金銭的負担が重くならないように、適切な補助金の利用などをアドバイスしてくれます。
②事業引継ぎ支援センター
次に紹介する相談窓口は「事業引継ぎ支援センター(以下、センター)」です。
センターは、平成28年3月28日現在、全国に47カ所設けられています(各地の事業引継ぎ支援センターはコチラです)。
センターは会社の譲渡方法(株式譲渡、事業譲渡)の相談を始め、譲渡に際しての事業価値の把握の支援、譲渡契約の法的チェックを行う専門家の紹介、提携している民間のM&A仲介会社の紹介など、事業譲渡に関する様々な要望に応えてくれます。
センターは、民間では追随することができないような事業承継(M&A等)の支援実績があります(支援実績はコチラでご覧になれます)。
さらに、全国規模のデータベースを持っているため、広い範囲であなたの会社を引き継ぎたいという会社等が網にかかり、M&Aなど成功しやすいでしょう。
センターは事業承継、特にM&Aにまつわる相談が中心ですので、後継者がいないなので廃業を考えざるを得ないような経営者が利用するのに適しています。
もちろん、公的な相談窓口であるため、相談料は無料です。
ちなみに、神奈川県の事業引継ぎセンターは次のような支援を行います。
ⅰ.M&A(あなたの会社を売ったり、合併したりすること)、親族内・親族外承継などに精通した専門家を配置し、幅広く相談に対応
ⅱ.マッチングから引継ぎの最終契約締結まで一貫した取り組みの支援
具体的には、M&A支援の専門機関(金融機関や民間仲介業者)を「登録民間支援機関」として事業承継センターに登録し、中小企業との橋渡しをします。
また、後継者不在の小規模事業者と起業家をマッチングするため、「後継者人材バンク」を設置します
ⅲ.中小企業基盤整備機構に設置された事業引継ぎ支援全国本部が運用するデータベース(全国の譲渡する側と譲り受ける側の会社情報を登録)などを活用し、広域なM&A案件に対処する
こういった充実した公的なサポート期間があっても、次のような理由で相談を躊躇する人もいるかもしれません。
「相談窓口があっても、何を相談したらいいか分からないんですよね。」
しかし、経営者が事業承継を経験するのは普通一回だけですので、何を相談していいかわからないのは当たり前であり、ためらう必要はまったくありません。
具体的には、
- このまま廃業せざるを得ないのかどうか分からない
- どのような形で、ビジネスから引退するのがいいのかわからない
- どのようないすれば事業承継を成功させることが出来るの分からない
- 後継者がいないので、この先会社をどうしたらいいのか分からない
- 後継者はいるが、どのように会社を継がせていけばいいか分からない
- 他の会社に売却したいがどうすればいいのか分からない
- うちの会社を買いたいという人がいるが、どうすればいいか分からない
など、相談内容はなんでもいいのです。
端的に言えば、事業承継は「あなたの引退」に係る問題です。
ですから、あなたが引退時、あるいは引退後に不安を感じているなら、上述の公的なサポート機関を利用すればいいのです。
なお、以前に当サイト「商道(あきんどう)」の起業カテゴリーで起業の出口戦略について書いています。
ご興味のある方は合わせてお読みください(起業の出口戦略の記事はコチラ)。
いつ、あなたは相談に行くべきか?
事業承継と廃業は表裏一体の関係です。
つまり、事業承継しなければ、廃業を選択せざるを得ません。
事業承継や廃業をするにせよ、引退後のあなたが幸せで穏やかな生活を送ることができなければ成功したとはいえないないでしょう。
幸せな「事業承継(あるいは廃業)」をするためには、ビジネスの財務状況などを良くしておいた方がより安全です。
そして、販売、財務、人事などの経営状況を良くするためには、ある程度の時間をかけてビジネスを“磨き上げ(経営改善)”する必要があります。
この“磨き上げ(経営改善)”は短期間でできるものではなく、ある程度の時間をかけてじっくり取り組むべきものです(5年くらいは最低でも必要であると私は思います)。
ですから、50代以上の経営者は今すぐにでも相談に行かれるといいでしょう。
会社の経営状況にもよりますが、事業承継への対処が早ければ早いほど、時間があなたに味方します。
まとめ
体がまだ言うことを聞くうちは、事業承継の問題は先送りにされがちです。
しかし、そろそろ考えなければならないと思う時には、遅きに失することも多いのです。
とは言え、事業承継の問題について誰に相談すればいいのか分からない経営者も多いでしょう。
この記事では、無料で利用できる公的な支援機関をお勧めしています。
50代以上の経営者の方は、今すぐにでも相談に行かれるといいでしょう。
なお、事業承継について、見やすい冊子(無料)が中小企業庁から出ております。
これらの冊子を入手して、事前に事業承継について知識を蓄えておくといいでしょう。
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