貸借対照表の左側、負債の部の勘定科目を理解しているでしょうか?
負債の部の勘定科目は「倒産」のトリガーとなります。
そうならないためには、しっかりとした負債の勘定科目の知識を持つてしっかり管理する必要があります。
負債は払わなければならないお金です!
負債の部の大部分は、「支払義務」を意味します。
つまり、ある期限までにお金を準備して支払いを済ます必要があるということです。
そして、仮に相手先が倒産したとしても、借金は帳消しになるわけではありません。
むしろ、倒産した相手先の債権者や管財人は、返済が遅れている買掛金などについて激しく取り立ててくるでしょう。
このため、資金繰りが急激にひっ迫し、場合によっては連鎖倒産してしまうかもしれません。
ですから、負債の部の勘定科目を理解し、しっかり管理することが重要になってきます。
負債の部の勘定科目に対する注意点は?
負債は支払いの期日管理をしっかりやることが重要です。
あなたの会社のうっかりミスから期日が遅れたのだと、相手先は善意に解釈してくれません。
むしろ、相当資金繰りがひっ迫していると疑うことでしょう。
そうなると、相手先は取引を大幅に縮小、停止することを検討する可能性があります(つまり、あなたの会社は仕入れ取引などが困難になる)。
また、帳簿に記載されていない債務(いわゆる簿外債務)はないという点にも注意する必要があります。
うっかりミスでもない限り、こんなことは起こらないと思うかもしれません。
しかし、負債を簿外とすることで見かけ上利益を増やすことができるので、銀行取引を有利に進めたいと思う経営者は、故意にやってしまったりします。
総合的に決算書を見るとこういったウソは必ずばれるものです。
そしてばれた時には「信用」が大きく損なわれ、再起不能になりますので絶対やめましょう。
いずれにしろ、負債項目は嘘をつかず、約束通りにしっかり支払いをすることが「信用」維持の点から重要です。
①支払手形
支払手形は仕入れ代金を決済するために振出した手形のことです。
支払手形は約束手形と為替手形の2種類に分けられますが約束手形として振出すケースが圧倒的です。
なお、支払手形は当座預金口座を持たないと振出せません。
支払手形は支払まったなしです。
期日に支払わなければ、当然に相手先からの信用はガタ落ちです。
さらに、手形が落ちなければ、銀行取引停止になる可能性があります(1回目の不渡りから6カ月以内に2回不渡りを出した場合、つまり“事実上の倒産”)。
不渡りを出すと、金融機関からの新規の借り入れができなくなるばかりでなく、今ある借入金についても担保の積み増しを要求されたりします。
特にうっかりミスで簿外になっているような場合、手形の期日管理が甘くなりがちですので注意しましょう。
なお、実際の仕入れがないにもかかわらず、お金を融通してもらうために手形を振り出すこともあります。
これを融通手形といいます。
融通手形を振り出すことがないように(相手先は高利貸のケースが多い)、資金管理はしっかり行う必要があります。
融通手形を振り出すこと自体が資金繰りがひっ迫した証拠ですので、融通手形を振り出すことがないように注意しましょう。
②買掛金(建設業の場合は工事未払金)
買掛金は仕入れ代金を後払いで支払う場合(掛け仕入れ)に使う勘定科目です。
①の支払手形と合わせて仕入債務と言われます。
支払手形と違い、期日までの支払いはガチガチではありませんが、支払をさらに猶予してもらえば、相手先は当然にあなたの会社の資金繰りが厳しいのではないかと判断します。
その結果、相手先は現金決済や振り込みでの支払いしか認めないということになり、資金繰りはさらに悪化していきます。
なお、買掛金も簿外にいては、支払手形と同様に注意する必要があります。
③前受金(建設業の場合は未成工事受入金)
前受金は、商品売買について、前もって代金の一部または全部を支払ってもらった時に使用する勘定科目です。
資金繰りが厳しくなると、相手先にお願いして前受金を受け取れるように要請したりします。
建設業などの場合は、引き渡しまでに時間がかかり受注金額が大きいので、前受金をもらうことが一般的です。
しかし、建設業などでない場合、前受金が急に増加したなら、相手先は資金繰りが悪化しているのではないかと疑います。
④借入金(短期・長期)
金融機関からの借入金については、利益が出ているにもかかわらず、借入金の額が大きかったり、急増している場合は何らかの問題がある可能性が高いと銀行は疑います。
また、中小企業の場合は社長からの借入しているケースも多いでしょう。
これが急増している場合は資金繰りの悪化を銀行は疑います。
⑤未払金(短期・長期)・未払費用
未払金は営業以外(たとえば、固定資産の購入)の活動で、まだ支払いが行われない場合に使う勘定科目です。
厳密に言えば、未払費用は借入金利息のように継続的に支払うもので、時の経過とともに費用となるものを処理する時に使う勘定科目です。
ですから、未払費用は金額が小さいことが普通です(ただし、中小企業の場合、文字通り費用の未払い分をこの勘定科目で処理しているケースもありますが、本来は未払金です)。
未払金は支払手形や買掛金と違い、継続的な取引先の債務を処理する科目ではありません。
ですから、支払が遅れたからといって、即座に営業活動が致命的な影響を受けるということはありませんが、一時的な相手先への債務だからといって不当に支払いを遅らせていいわけでは当然ありません。
「信用できない相手」だという噂は、どこからどう広がるか分からないからです。
また、未払金・未払費用は、一時的な相手先であるため、管理が甘いと計上漏れが起きたりします(要は簿外債務)。
この場合、税金を多く払うことになる可能性もありますので注意しましょう。
⑥未払法人税・未払消費税
法人税や消費税の未払分を処理する勘定科目です。
これらについては、正しく会計処理がなされていないと(たとえば、計上もれなどがあると)、その額は当然正しく計算できません。
⑦各種引当金(賞与引当金や退職給与引当金など)
賞与や退職金制度がある場合なら(制度がある場合は規程化されている)、計上すべきものです(税務上損金になるかどうかとは本来別の話)。
中小企業では計上していないところも多いかもしれませんが、スケールアップを目指すならしっかり計上するようにしましょう(計上すべきものを計上しないのは“粉飾”です)。
⑧その他流動負債(預り金・仮受金)
“その他”は疑いを向けられところです。
その他流動負債に含まれる勘定科目は、基本的には金額的に小さいので「その他」で一括りされるものです。
ですから、これらの金額が大きい場合は、それだけで疑いの目を向けられます。
たとえば、高利貸からの借金があると銀行は嫌がりますから、経営者としてはついつい借入金で処理したくなくなります。
そこで、こういった経営者は仮受金などの科目を使って処理しようとします。
しかし、当然のことながら銀行はその他の流動負債で異常のあると思ったところはしっかり見ますのでそんなことをしてもすぐバレます(その結果、銀行からの信用を失う)。
まとめ
負債の勘定科目は倒産へのトリガーとなる可能性があるため注意が必要です。
会社のために良かれと思って行った会計処理があなたの会社の信用を大きく傷つけ、取り返しのつかない事態になるかもしれません。
ですから、顧問税理士に相談のうえ、管理を適切に行い、正しい処理を心がけましょう。
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