あなたは所有する有形固定資産を効率的に運用しているでしょうか?
実は、有形固定資産回転率という経営指標によって、有形固定資産の稼働状況が良好か、そうでないのかがわかります。
有形固定資産回転率は判断するのが非常に難しい指標です。
この記事を読むことで、有形固定資産回転率について次のことがわかり、適切に判断できるよになります。
- 計算方法
- 意味
- 目安
- 改善方法
また、有形固定資産回転率は、有形固定資産を効率的に使用しているのかがわかるだけでなく、将来、設備投資する時にビジネスにどのような影響があるのかといったヒントを与えてくれるでしょう。
1.有形固定資産回転率の計算方法
有形固定資産回転率は次のように計算します。
分母の有形固定資産は「建設仮勘定」を除いた金額です。
建設仮勘定はまだ稼働していない有形固定資産だからです。
また、分母は期中平均残高((期首残高+期末残高)÷2)を使用して計算する方法もあります。
2.有形固定資産回転率の意味
基本的にこの比率が大きいほど良いと判断します。
有形固定資産回転率は「回転数」で表します。
回転数が高いほど、少ない固定資産投資額で効率的に収益を獲得していることを意味しています。
反対に回転数が低いほど有形固定資産が過大になっている(あるいは、今ある有形固定資産を十分に活用していない)ことを表しています。
有形固定資産は長期にわたって企業活動に貢献しますが、購入時に大きな資金的な支出が生じ、その後は「減価償却費」を通じて資金を回収していきます。
有形固定資産を十分に活用できずに売上が減少して、「営業損失+減価償却費<0」の状態になると資金的余裕がなくなります。
また、有形固定資産は使用によって価値が減少していくものなので、寿命がくれば更新(再投資)します。
ですから、設備投資をしないと、有形固定資産残高は減っていくので回転率は毎年上昇していきます(売上が一定であると仮定する場合)。
さらに、寿命が来た有形固定資産をどうにかこうにか使い続けている状態であると、有形固定資産回転率は高くなります。
逆に、設備投資を積極的に行うような企業は、有形固定資産回転率が低くなることもあります。
3.有形固定資産回転率の目安
有形固定資産回転率の業種別の目安は次のとおりです。
有形固定資産回転率は目利きの必要な経営指標です。
前述したように高ければ「良い」、低ければ「悪い」と一概には言えないのです。
『中小企業の設備が大企業の設備に比して老朽化が進んでいる(中小企業白書2018年版第2部第1節)』ため、中小企業の回転率は高く(つまり良く)なっている可能性があります。
ですから、業界平均と比べて一喜一憂するのではなく、固定資産の状態や時系列の回転率を見て実質的に判断することが必要です。
4.有形固定資産回転率の改善方法
計算式からわかる有形固定資産回転率を良くする方法は次のとおりです。
- 売上の増加
- 有形固定資産の減少
有形固定資産は生産販売活動に不可欠なものなので、「有形固定資産の減少」を形式的に考えてはいけません。
ここで言う「有形固定資産の減少」とは、遊休資産を減らすということです。
遊休資産は収益を得るためになんら貢献しません。
ですから、こういった遊休資産を所有している方は処分を検討するといいでしょう。
土地などの遊休資産を所有する人は、工場の建設予定地であって、計画を一時的に凍結しているだけであると言うでしょう。
また、持っているだけでも、もしもの時に役立つかもしれないと言うかもしれません。
残念ながら、その「一時的」な凍結はもっと長くなる可能性が高いでしょう。
また、少子化が進むこれからの時代、不動産などの資産が持っているだけで値上がりすることも少なくなっていくでしょう(むしろ高度成長期がボーナスの時代だった)。
となると、有形固定資産回転率を上げる最善策は「売上の増加」ということになります。
ちなみに、有形固定資産の効率を見るというと、設備自体の効率性だけで考える人もいます。
今の機械は1日に100個の製品を作れるが、今度導入する設備は300個も作れるというように。
しかし、設備自体の効率がいくらあがっても、売れなければ意味がありません。
在庫の山を築き(棚卸資産回転期間の悪化)、ビジネスの効率自体も悪くなります(総資本利益率の悪化)。
ビジネスにおいて設備投資することは良いことです。
しかし、将来の経営環境をしっかり読み、適切なタイミングで売上を獲得できるような投資を行うことが必要です。
まとめ
有形固定資産回転率により、有形固定資産が効率的に使用されているかどうかがわかります。
しかし、適切な判断をするためには、有形固定資産回転率の意味をしっかり理解する必要があります。
もし、理解が不十分であるなら、判断を誤り、あなたのビジネスの力を弱くしてしまうかもしれません