売上総利益が減少してくると、あなたのビジネスの力はどんどん弱まっていきます。
あなたのビジネスの収益性を見る経営指標に「売上総利益率」があります。
この記事を読むと、売上総利益率について次のことがわかります。
- 計算方法
- 本質的な意味
- 目安
- 悪化している場合の改善法
売上総利益率を深く理解することで、この収益性の指標が落ちてきたときに真剣に対処しなければならない理由がわかるでしょう。
その結果、売上総利益率の数値に一喜一憂するライバルに圧倒的な差をつけることができるでしょう。
1.そもそも売上総利益とは?
売上総利益は損益計算書の項目であり、「粗利」とも言います。
売上総利益は、売上高から売上原価を控除して計算します。
売上原価は、販売した商品の仕入れ費用(仕入原価)や原材料や人件費など製品に要した費用(製造原価)です。
損益計算書において、売上総利益はすべての利益の元になる数字です。
売上総利益を計上できなければ、あなたの給料も出ないし、店舗等の家賃を支払うこともできません(損益計算書の利益の見方についてはこちらの記事で詳しく解説しています)。
売上総利益は、売上原価以上の価格で商品を販売することにより生まれるものです。
この意味で売上総利益は、あなたの「商品や製品の稼ぐ力(利益を生み出す力)」、つまり「商品力」を示しています。
2.売上総利益率の計算
売上総利益率は次のように計算します。
売上総利益、売上高の数値は損益計算書から簡単に拾えます。
3.売上総利益率の意味
売上総利益率は上の式からわかるように売上高と売上総利益の比率です。
この比率は、あなたの販売する商品・製品から生まれる利益の割合を示しています。
簡単に言うと、あなたの「商品や製品が利益を生み出す力」を表し、売上総利益率が高いほどビジネスに余裕が生まれます。
4.売上総利益率の目安
原価の構造が違うため、売上総利益率は業種によってばらつきがあります。
そのため、目安としての売上総利益を一律に示すことはできません。
ですので、業種ごとの売上総利益率を以下に示しておきましょう(出典「平成27年 中小企業の財務指標(一般社団法人 中小企業診断協会編)」。
上の表を参考に自社の属する業種と比較してみましょう。
業界の売上総利益率より上だった方は安心することなく、さらに上を目指してください。
残念ながら下回った方は、次の売上総利益率を上げる改善策にじっくり腰を据えて取り組んでいきましょう。
5.売上総利益率の改善法
売上総利益率の改善は分子の売上総利益を増やすことです。
上記のように、売上総利益は売上高から売上原価を控除した金額ですから、売上総利益を増やす方法は次の2つです。
- 売上高を上げる
- 売上原価を下げる
5-1.売上高を上げる4つの基本的な方法
そして、売上高を増やすには次の4つの方法があります。
- 顧客数を増やす
- 平均販売単価を上げる
- 販売数量を増やす
- 購入回数(リピート回数)を増やす
これら売上を増やす4つの方法は、残念ながら会計の範囲外の話です(売上の増加はコントロールできるか?)。
このことは損益分岐点分析で導き出した「目標売上高」が達成手段を持たない限り実現しないことからもわかるでしょう(目標売上高の達成が難しい理由はこちらの記事で解説しています)。
ですから、経営者はマーケティングの施策を学び、「販売力」を強化しなければならないのです。
5-2.売上原価を下げる方法
続いて、売上原価を下げる方法です。
たとえば、次のようなものがあるでしょう。
- 仕入先と値引き交渉する
- 外注加工を増やす
- 品質が同等の価格の安い原材料等に変える
しかし、仕入原価、原料費、人件費、外注加工費は取引相手がいることですので、そう簡単に費用削減できるものではありません。
無理に価格を引き下げようとすれば、品質の悪化を招き、商品力そのものが落ち込んでしまうかもしれません。
となると、自社でコントロール可能な製造経費の削減を考えることになります。
たとえば、次のようなことを考えることができます。
- 工場の水道光熱費を削減する
- 生産性の高い生産設備を導入する
- 製造工程をより合理的なものにする
しかし、こういった費用の削減策であっても、もうこれ以上引き下げることができない限界値があります(ゼロにはできない)。
もちろん、お客様のために、そして自社のために費用削減は常に努力をし続けなければならないものではあります。
けれども、費用削減策ばかりに目を向けずにコントロールできないと思い込んでいた「売上を上げる」ことにも目を向ける必要があるでしょう。
まとめ
売上総利益はビジネスの土台となる利益です。
なぜなら、売上総利益は商品・製品の稼ぐ力を表しており、これらが生み出した利益により、人件費や家賃を負担することができるようになるからです。
ですので、一般に売上総利益率が悪ければ、その他の利益率も悪くなります。
経営者はビジネスの基礎となる売上総利益率を上げる努力をしなければなりません。
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