卸・小売業などの商品在庫を多く保有する業種は、在庫投資の判断を誤ると経営が途端に傾く可能性があります。
在庫投資額が利益を効率的に獲得しているかをみる経営指標に「交叉比率」があります。
当記事を読むと交叉比率について次のことがわかります。
- 計算方法
- 意味
- 目安
- 改善方法
交叉比率を熟知することで、より少ない投資でより多くの利益を稼ぎ出すような在庫投資ができるようになるでしょう。
1.交叉比率の計算方法
交叉比率は次のように計算します。
分母は棚卸資産、分子は売上総利益のシンプルな経営指標です。
2.交叉比率の意味
交叉比率は数値が高ければ良いと判断します。
交叉比率は在庫がどれくらいの利益を上げているかをみる経営指標です。
在庫は経営上の重要な投資(在庫投資)ですので、投資によってどれだけの利益をあげたのかという投資効率をこの比率でみるわけです。
実は、交叉比率は以下のように分解できます。
売上総利益率は、「商品の稼ぐ力」を表します(売上総利益についてはこちらの記事で解説しています)。
棚卸資産回転率は(1年間の)売上高をあげるのに在庫が何回転したかをみる経営指標です。
交叉比率を分解した式からわかるように、売上総利益率が同じであっても、回転率が2倍になれば交叉比率(棚卸資産の効率)は2倍になります。
棚卸の回転が早いということはそれだけ売れていることを意味しますから(飲食業でお客さんの回転が早いというのと同じ)、交叉比率をあげるためにはスピードも重要であることがわかります。
なお、棚卸資産回転率は棚卸資産回転期間の逆数です。
交叉比率を分解する考え方は総資本利益率のそれと同じです(総資本利益率については、こちらの記事で詳しく解説しています)。
3.交叉比率の目安
交叉比率は主に卸・小売業で使う経営指標ですので、中小企業実態基本調査(H29年)から卸売業・小売業の比率(参考として売上総利益・棚卸資産回転率)を以下に示します。
4.交叉比率の改善方法
式からわかる交叉比率の改善法は次のとおりです。
- 売上総利益率を改善する
- 棚卸資産回転率を改善する
卸売や小売は、多くの商品を取り扱っているはずです。
その商品のなかには粗利の良い物と悪い物があるでしょうし、また、回転の良い商品と悪い商品もあるでしょう。
全体としての交叉比率を良くするためには、非効率な商品・商品群のてこ入れや廃止を検討することも必要です。
なお、売上総利益率や棚卸資産回転率(棚卸資産回転期間の逆数)の改善法については各記事の中で詳しく解説していますので、そちらをご覧ください。
まとめ
卸売・小売業について在庫の効率性をみる経営指標に交叉比率があります。
この比率は卸・小売業が保有する数多くの在庫投資が効率的に利益を稼いでいるかをみる指標です。
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