固定長期適合率の改善で、資金繰り悪化を回避する!?

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銀行からお金を借り入れて、設備投資しようと考えている方もいるでしょう。

設備投資のための借入は期間が長く、金額も多額になるので慎重になるものです。

 

無謀な設備投資はあなたの会社の資金繰りを悪化させ、借入金の返済ができなくなる恐れがあります。

しかし、だからと言って借入を恐れていては、経営で遅れをとることになりかねません。

 

借入金の返済不能という最悪の事態を避け、タイムリーな設備投資をするために、設備投資する前にしっかり検討する必要があります。

 

「固定長期適合率」という財務指標を使うことで、借入金の返済に怯えることのない設備投資を行うことができるようになります。

この記事を読むことで、固定長期適合率について次のことがわかります。

  1. 計算方法
  2. 本誌的な意味
  3. 目安
  4. 改善方法

固定長期適合率を熟知することで、銀行から実際に設備資金を借入する時には、よりスムーズに融資を受けることができるでしょう。

なお、すでに設備投資の借入をしていて、資金繰りがどうも厳しいという方は、固定長期適合率の改善法を知ることで、資金繰りを楽にすることができます。

1.固定長期適合率とは?

1-1.固定長期適合率の計算方法は?

固定長期適合率は次のように計算します。

equation-of-fixed-long-term-conformity-rate

 

 

 

分子の固定資産は貸借対照表の左側(借方)、流動資産の下の固定資産という項目です。

なお、固定資産は有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産に分かれます。

中小企業の場合、金額的には有形固定資産が最も多いので、固定資産のうちの有形固定資産を念頭に話を進めます。

一方、分母は貸借対照表の右側(貸方)、流動負債の下の固定負債、純資産という項目です。

どちらも、貸借対照表から簡単に数字が拾えます。

 

ちなみに、固定長期適合率の仲間で「固定比率」という財務指標があります。

固定比率は、

固定比率(%)=固定資産÷純資産×100

で計算されます(固定長期適合率の分母から固定負債を除いて計算)。

 

中小企業は、一般的に純資産が少ない傾向にあり、固定資産の購入を借入金に依存しているので、固定比率でなく、固定長期適合率を活用したほうがいいでしょう。

指標を多く知っていても、それを有効活用できなければ、宝の持ち腐れです。

1-2.固定長期適合率の意味

財務比率は計算式をマスターすることより、その意味を知ることが重要です。

ですから、財務比率を自社に適用し、その良い、悪いで一喜一憂することのないように注意する必要があります。

 

それでは、少し長くなりますが、固定長期適合率の意味について説明しましょう。

固定資産は商品などの在庫(棚卸資産)と違い、売ることによりすぐにお金が入ってくるものではありません。

中小企業で金額の多い有形固定資産は商品などを売るために必要になってくる資産です。

 

たとえば、製造設備であれば製品を作るため、建物であれば商売自体をする場所を確保ため保有します。

固定資産は商品を売ることを前提にしていない以上、何らかの方法で投資したお金を回収していかなければなりません。

 

有形固定資産(土地を除く)は減価償却という方法により長期に亘って(1年以上)、投資した資金を回収していきます(なお、減価償却の詳しい解説はコチラをご覧ください)。

有形固定資産が使うことにより、長期でお金を回収していくのであれば、それを買うための資金も長期、あるいは、返済の必要のないものでなければなりません。

 

もし、1千万円の固定資産を1年以内に返済しなければならない借入金で購入したらどうなるでしょう。

1千万円を超える現預金を持たない限り、借入金の返済時にその資金をどこからか捻出してこなければなりません(つまり、資金繰りに困る)。

 

固定長期適合率によって、固定資産が長期の資金(長期借入金などの固定負債)や返済しなくてもよい資金(純資産)の枠内に収まっていているのか分かります。

つまり、固定長期適合率で資金繰り(長期的な資金=固定資金)が安全なのかが分かるのです。

 

固定長期適合率は「固定資産<(固定負債+純資産)」という状態でバランスしているのが望ましい姿です。

そして、この状態であれば、借りたお金を返せないような兆候にないと判断できるわけです。

 

ですから、お金を貸す側の銀行にとってもとても重要なので、「信用格付」で融資の判断に使われる指標の一つです(なお、信用格付の説明はコチラです)。

1-3.固定長期適合率の目安とは?

固定長期適合率は100%以内に収まっていなければなりません。

財務力のある会社を目指すなら70%の水準を目安にしましょう。

 

参考のために、業種別の数値を見ましょう。

fixed-long-term-compliance-rate-by-industry

 

 

 

 

 

 

 

 

この統計を見ると、100%を超える、つまり“見合っていない”のは、宿泊・飲食サービスだけです。

資金という目で見ると、飲食サービスはかなり厳しい業界であることがわかります。

飲食業はお客様に飽きられないように積極的に店舗の改装などを行います。

そうすると、どうしてもこの比率は上昇する傾向にあります。

 

しかし、固定長期適合率が低いからいいのかというと、そういうわけでもありません。

なぜなら、新しい固定資産が購入できずに、古い設備などを使っている可能性が高いからです。

帳簿価格がわずかな老朽設備で経営しているような会社は、固定長期適合率は小さい傾向にあります。

なぜなら、こういった老朽設備の場合、長期借入金返済が終わっているのでゼロ、固定資産(有形固定資産)の金額も減価償却済みでごくわずかだからです。

だから、このような場合には比率が小さいからといって、望ましい状態と言えないわけです。

生産性の低い古い設備では、根本的な“稼ぐ力”があるか疑問が残るからです。

3.固定長期適合率を改善するには?

3-1 計算式から見る改善方法とは?

計算式をもう一度見ます。

improvement-of-fixed-long-term-conformity-rate

 

 

 

固定長期適合率を改善するためには、分子の固定資産を減らすか、分母の「固定負債+自己資本」を増やすかです。

3-2 固定長期適合率の改善は遊休資産の処分が有効!?

まず、分母からです。

この比率を改善するために長期借入金などの固定負債を増やすというのも変な話なので除外して考えますと、結局自己資本を上昇させるというのが分母を引き上げる方法ということになります。

そして、自己資本を増やすというのは、出資するか、“稼ぐ力”を付けて利益を積み上げていくしかありません。

 

なお、資金に余裕があり、手っ取り早く固定長期適合率を改善したいなら出資しましょう。

固定長期適合率を引き下げるだけでなく、自己資本比率も改善します(自己資本比率の改善法はコチラで解説しています)。

 

一方、分子です。

「固定資産を少なくする?」と疑問に思う人もいるかもしれません。

少なくするターゲットは、利益獲得の貢献度が低い(もしかすると、足を引っ張っていると言っていい)固定資産です。

 

こうした固定資産は今では少なくなっているかもしれませんが、歴史の古い会社は、いまだに大事に抱えているかもしれません。

具体的にはバブル期に買ったゴルフ会員権、使わない土地などです。

持っていても値上がりすることはないと思いますので、遊休の土地などは処分を考えましょう。

そして、売却で得たお金で、長期借入金を返済しましょう。

固定長期適合率の分子、分母とも減少するため、比率自体は改善するかどうかケースバイケースですが、現実の資金繰りは間違いなく楽になります

 

なお、固定長期適合率と流動比率は資金繰りの改善において密接に関係しています。

つまり、固定長期適合率を改善すれば、流動比率も改善するのです。

流動比率の短期的な改善は難しく、基本的には利益を生み出す力をつけなければなりません(流動比率の改善法はコチラで解説しています)。

 

一方、固定長期適合率の改善は、あなたが遊休資産の処分を決めさえすればいいわけです。

固定長期適合率の方が、実行しやすい改善法だと思わないでしょうか(なお、土地は抵当権が設定されていると処分が簡単にはできませんので、銀行に相談しましょう)。

4.まとめ

固定長期適合率は、固定資産の購入のための借入金が返済不能な状態でないかを、固定資産とその調達資金とのバランスで見る比率です。

新しい設備などを購入するにあたってはこの比率がどう動くのかを見極めて投資すると、後々の資金繰りに困らなくなります。

 

この比率は流動比率と一体の関係にあるため、短期的な資金繰りにも影響を及ぼします。

つまり、固定長期適合率が悪ければ、流動比率も悪くなります。

逆に、どちらかを改善すれば、もう一方も改善します。

流動比率が現実の資金繰りを考えるとその対策が取りにくい(本質的な“稼ぐ力”を上げていくしかない)のに比べて、固定長期適合率は出資や遊休資産の処分などの対策が取りやすいことが多いでしょう。

関連記事:その他6つの財務指標を改善すれば、銀行が融資したくてウズウズするような財務の強い会社になります。その他6つの財務指標については以下の記事をご覧ください。

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