収益性が良いのに、銀行が貸出をしぶる理由?

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今期は利益率が高かったので、銀行から借り入れをして、いよいよ商売を広げたいと思っているかもしれません。

しかし、残念ながら収益性が高いというだけで、快く貸し出ししてくれるほど銀行は甘くありません。

すでに銀行に融資の相談に行き、いろよい返事をもらえなかった人もいるかもしれません。

 

実は、銀行が貸し出しに際して重視するのは、利益率などの「収益性」ではありません。

 

銀行が融資審査で使用する財務指標の多くは「安全性」だからです。

 

この記事を読むと、銀行が利益率などの収益性分析を重要視しない理由が分かります。

また、銀行から評価される「収益性」の高め方が分かるようになります。

そして、安全性のみならず、収益性が銀行から信頼されるようになることで、あなたは必要な資金をスムーズに銀行から借り入れることができるようになります。

収益性分析とは?

収益性分析とは端的に言えば、「儲かっているかどうか」を見ることです。

企業は儲けることを目的としている以上(非営利の企業は含まない)、収益性は重要です。

具体的には、「売上高経常利益率」、「総資本経常利益率」などが収益性の指標です。

 

また、収益性に関連して成長性という指標もあります。

成長性は、「“連続して”売上高や利益などが伸びているか」を見ることです。

具体的には「売上高成長率」、「経常利益成長率」などが成長性です。

成長率は、たとえば“前期に比べて”売上や経常利益がどのくらい伸びたかを見ます。

1期のみの収益性が高いというより、毎期売上、利益が伸びているほうが銀行としては貸し出しても大丈夫と思うでしょう(なお、成長性についてはこちらの記事で解説しています)。

 

業績が良いような場合、収益性を銀行に評価してほしいと誰でも思うでしょう。

しかし、融資審査の評価システムでは残念ながら配点が低いのです。

 

なお、収益性、成長性の計算式は以下のとおりです。

売上高経常利益率(%)=経常利益÷売上高

総資本経常利益率(%)=経常利益÷総資本

売上高成長率(%)=(当期売上高―前期売上高)÷前期売上高

経常利益成長率(%)=(当期経常利益-前期経常利益)÷前期経常利益

再現性の問題~好調な利益率を来期も実現できるのか?

売上高経常利益率などの収益性指標を上げたあなたの頑張りに対して、銀行は敬意を示してくれるでしょう。

しかし、それとお金を貸すのは別の問題です。

つまり、お金を貸す銀行は、「収益性が良い(利益率が高い)」というのは“たまたま”でないかと考えるのです。

ですから、収益性や成長性を評価してもらいたいなら、“たまたま”でないことを説明する必要があります。

 再現できる“施策”がなければ収益性は絵に書いた餅だ?!

評価される収益性や成長性は、それを向上させる“精度の高い施策”があることです。

利益率などを高める“施策”があり(例えば売上アップのための施策)、その精度が高い場合、今期の好調な利益率が来期も再現できる可能性はかなり高くなります。

 

決して、今期の収益性や成長性が高いから、来期もそれが続くわけではないのです。

 

あなたは利益率などを高める施策を、銀行に具体的かつ詳細に説明できるでしょうか?

もし、できないのであれば、“たまたま”と銀行に受け取られてしまうでしょう。

 

もちろん、ここでいう好調な利益率の“再現性”は実験室で観察されるような100%のものではありませんが・・・。

しかし、仮に当期の業績が思ったほどでないとしても、“施策”がある社長は「改善」できるのです。

精神論しか持たない社長は、「もっと頑張れ」しか言えませんが、施策のある社長は具体的な行動レベルで修正できます。

収益性や成長性で重要なことは、結果としての数値ではなく、“その結果を再現できる施策”があるかどうかなのです。

だから、“施策のない結果”は“たまたま”と考えるしかなく、融資の評価における配点も低いのは当然なのです。

利益率向上の施策は2つある!?

そもそも、融資において収益性や成長性の配点が低いというのは、“施策”を持たない社長が圧倒的に多いからでしょう。

であるならば、あなたがやるべきことは収益性や成長性を高める“施策”を持つということになります。

簡単に言うと、利益率などの収益性をあげるための方向性は、基本的に、

  • 売上を上げる
  • 費用を下げる

の2つの方法で実現できます(利益は計算結果に過ぎない)。

次の計算式を見てもらえば分かるとでしょう。

利益↑=売上↑-費用↓

 

しかし、多くの社長は「費用削減」のみに目を向けます。

なぜなら、売上の向上策に比べて、費用削減は自社内の決断でできるのでコントロールしやすいからです。

 

費用削減はもちろん大切なことですが、これ以上引き下げられないという下限があります。

ですから、中小企業は売上アップのための施策についても十分考えるべきでしょう。

 

(なお、中小企業が陥りがちな費用削減至上主義については「中小企業の費用削減”至上主義”は危険です!!」を参照してください。)

売上アップの施策を持つことが重要なワケ?

売上アップのための精度の高い施策を持つと銀行から評価されやすくなります。

 

銀行は融資に際して、「収益性」より「安全性」に重きを置くと言いましたが、その安全性の中で、最も重視されるのは「債務償還年数」という財務指標です。

この指標はあなたに借入金の返済能力があるかどうかを見る指標です(なお、債務償還年数の詳しい説明については「債務償還年数を改善し、銀行借入金の返済能力をパワーアップ!」を参照してください)。

この財務償還年数を改善するための最も堅実な方法は、営業利益を増加させることなのです。

 

しかし、営業利益を増加させるために、「費用削減」しかないとしたらどうでしょう。

あなたや従業員のモチベーションは下がりますし、何よりこれ以上の削減余地がない場合、対策がとれません(現実にこういった会社も多いと思います)。

こうなると、銀行から資金を貸し出してもらえなくなるために、自己資金で抜本的な対策をするしかなく、打ち手はどんどん狭まっていきます。

 

反対に、売上向上策があった場合には費用削減の余地がなくても売上を上げることで営業利益の拡大が望めます(もちろん、そのための費用も出ますが)。

ちなみに、売上向上策を持つことは、「事業性評価」という銀行融資の新時代に対応する一つのカギとなります(事業性評価については「事業性評価に対してどのような対策をすればいいのか?」の記事をご覧ください)。

 

簡単に言えば、 事業性評価は企業の成長性を評価して融資するというものですが、精度の高い売上向上策を持つことは、売上や利益の成長(増加)に寄与するからです。

まとめ

銀行融資においては、あなたが思うほど収益性の指標は評価されません。

なぜなら、“たまたま”である可能性が高いからです。

ですから、収益性を評価してほしいのであれば、“たまたま”でないこと、つまり、あなたがとった“施策”を具体的かつ詳細に説明できる必要があります。

“再現性”のない売上高や利益はお金を貸す銀行から見れば、評価しようがありません(頑張りましたねとは言えますが・・・)。

 

関連記事:なお、銀行から融資を受けやすくなるための、債務償還年数以外の安全性の指標は以下の記事を参照してください。

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